銀行vs.IT勢のキャッシュレス決済の顧客獲得競争が調剤薬局に及ぼす影響とは?
2018年11月、全国の銀行や地域金融機関が連携してスマートフォン(スマホ)を使った決済サービスで連携することが報じられました。利用するのはQRコードで、小売店の店頭でQRコードを読み取り、顧客の預金口座から買い物代金を引き落とす仕組みです。加盟店手数料は先行他社と比較し最低水準の1%で調整が進んでいるようです。
本格稼働は2020年4月とは?
ただ、本格稼働が2020年4月という発表には驚きました。なぜなら、一人のユーザーが複数のスマホ決済を使い分けることは、おそらく少ないと思われるからです。また、消費税増税時に実施されるキャッシュレス決済の5%還元策は2019年10月から実施されます。
こういったことから、正直、余りにも遅い対応という印象が否めません。ユーザーのほとんどは、増税前にキャッシュレス決済の準備を済ませていると想定されます。そして、使い始めた決済手段を銀行が提供するサービスに変更させることは、容易では無いと思うからです。
例えば、スマホがそのひとつです。いちど使い始めたスマホは、大多数の人がキャリアを変更しません。もちろん、格安通信など、サービスの質がさほど落ちないのなら利用料で変更することはあるのでしょう。
しかし、今回のケースで決済手数料を支払うのは加盟店側です。したがって、ユーザーにとってよほどのメリットがなければ、増税時の10月から7ヶ月も経過した2020年4月というのは変更することはマレだと考えられます。
調剤薬局でも同じだとは思いませんか?
先の話を「うん!そう思う。」そう感じたのなら、キャッシュレス決済の準備をしていない調剤薬局はどうなると思いますか?
私は、消費行動を変えた患者は流出し、いちど行動を変えた患者はほとんど戻ってこないと想定します。が、あなたは違いますか?
確かに、増税時のポイント還元は調剤にはありません。しかし、次の話を聞いたらどうでしょうか?
銀行連合にも強みはある!
ブランド力や規模に勝る金融機関がスマホ決済サービスに本格的に乗り出すことで、楽天やLINEなどIT(情報技術)各社との顧客獲得競争は新しい局面に入ります。
銀行連合の強みは、買い物代金が銀行から即座に引き落とされる仕組みのようです。でも、果たしてそうなるでしょうか?
例えば、LIENのLINEペイは銀行口座と連携していますが、決済前にいったん入金(チャージ)をする必要があります。また、余ったお金を口座に戻す時には手数料がかかります。確かに面倒と言えば面倒です。
しかし、LINEは決済額の最大5%をポイントで還元します。また、ヤフーとソフトバンクの決済アプリ「ペイペイ」は支払額の20%を利用者に還元する販促をすでに実施し、再度のキャンペーン実施を宣言しています。さらに、楽天はネット通販で貯めた楽天ポイントをスマホ決済での支払いに使うことができます。
果たして、銀行連合はこういったサービスを使ったユーザーに浮気をさせるほどのメリットを打ち出せるのでしょうか?私は至難の技だと、今のところの情報では考えてしまいます。
まとめ
イオンのショッピングセンターを使い慣れた消費者は、旅行先でもイオンに足を運ぶそうです。そこで、食事をしたりするのでしょうか?
こんな話でもわかるように、いちど定着した消費者の行動はそう簡単には変わりません。ですが、2019年10月の増税時には、キャッシュレス決済利用で5%が還元されます。
また、先のようにLINEやペイペイ、楽天のサービスの利用でポイントが使えたり貯まったりといったメリットがあります。今後、そういったキャンペーンが繰り返されることえ、そういったサービスを乗りこなすユーザーも確かにいるでしょう。ですが、ほとんどのユーザーは変化をきらいます。
しかし、そういったキャンペーンを乗りこなすユーザーからの声が、キャッシュレス決済普及の後押しになることも事実でしょう。そして少なくとも、今現在の調剤薬局の支払いにもLINEやペイペイ、楽天のキャッシュレスサービスの利用が可能です。
したがって、調剤薬局もコンビニ並みの備えが必要になります。また、この準備を怠れば、患者から見捨てられることになります。
今後、ますます増税時のポイント還元について、ワイドショーや雑誌などで大きく取り上げられることになります。そうなった時に慌てても、「真夏にエアコンを頼んで2週間待ち!」という状況になりかねません。
参考までに、私のクラアントがLINEペイを2018年の8月に申し込みましたが、申請が許可されたのは12月初旬でした。ということで、各社のワイドショーでポイント関連が取り上げられた時、もう時すでに遅し…、ということになるのは明らかでしょう。せめて、ここでご紹介しているキャッシュレスサービスの導入だけは急ぎましょう。
【重要】
調剤薬局の収益=患者数×調剤報酬+薬価差益です。この内、調剤報酬と薬価差益は今後も一方的なルール変更が繰り返されますから、コントロールができません。一方で、患者数は経営努力次第で増えることもあれば減ることもあります。2019年、そんな経営者の力量が試される時代がやってきました。
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