薬価の毎年改定が調剤薬局経営に与える影響を再確認しておきましょう!
2019年10月、消費税の10%増税14時に合わせて薬価改定が行われます。さらに2020年、通常の薬価改定も控えています。先のように主要製薬会社10社の医療用医薬品の売上高は、10社合計で前年同期比5.7%のマイナスと厳しいものになりました。しかし、医薬品卸はさらに厳しいのが現状のようです。
医療用医薬品の仕切り価格はアップしていた・・・
メーカーが卸に販売する価格を仕切価といいます。この仕切価は前回改定と比べ、2018年度薬価改定で新薬メーカーは全体で0.数ポイント、後発医薬品メーカーは1ポイント以上アップしていました。
MRのリストラは続いている!
2013年のエーザイが400人近いMRをリストラ(早期退職者募集)してから、毎年のように各メーカーのMRを切り捨ててきました。2018年度もアステラス製薬が600人を目標に早期退職者を募集しています。理由は簡単で、有望な新薬がないからです。売るものがなければ、高級取りのMRは製薬メーカーにとって厄介者以外の何物でもありません。
薬価制度の抜本改革 – 今後の薬価の毎年改定に備えて
薬価の毎年改定が、社会保障費の増大を少しでも減らそうという試みでもあります。また、ジェネリック医薬品の80%目標により、すべての新薬メーカーを取り巻く環境が一変してしまいました。その結果2018年に入り次のようなリストラの発表につながりました。
- サノフィ(外資)
- 日本ベーリンガーインゲルハイム(外資)
- ノボノルディスク ファーマ(外資)
- 大正製薬
- アステラス製薬
- エーザイ
今後も確実に薬価が下がります。収益もどんどん細ることになりますので、この流れが止まることはないでしょう。そして、そのしわ寄せは確実に医薬品卸に及ぶことになります。
医薬品卸の利益体系
卸の利益体系は大きく3つです。
- 売差:仕切価と医療機関への販売価格の差。例えば、薬価100円で仕切価80円の医薬品を医療機関に90円で販売すれば10円が卸の利益になります。
- リベート:メーカーから卸に売り上げの割り戻しがあります。
- アロワンス:卸の販促活動に対するメーカーからの報奨です。
このように3種類の利益がありますが、先のようにメーカーからの仕切価はアップしています。また、卸の主要顧客であるチェーン薬局は、値引要求を強めています。それも当然で、調剤報酬は減収が確実だからです。
今後、医薬品卸の薬局へ対応はどのように変化していくのか?
医薬品卸は仕切価での販売では売差がマイナスです。つまり、赤字です。これを他の二つの利益で補填し、なんとか黒字という厳しい状況です。ですが、先のように仕切価は上がりました。また、チェーン薬局は2018年の改定で調剤報酬が減りましたから、値引要求はさらにエスカレートすることになるでしょう。
中小調剤薬局の価格交渉は
- 製薬メーカーは今後、有望な新薬を開発できなければどんどん収益が減少する
- 2018年、製薬メーカーは仕切価をわずかながらアップ。ジェネリックも1%以上アップした
- 医薬品卸は、ずっと±0程度の収益でやってきた
そのシワ寄せは、川下にあたり調剤薬局にも確実に押し寄せることになります。
数店レベルの調剤薬局では価格交渉すらまともに相手にしてもらなくなるでしょう。また、数十店のチェーン店や大手チェーンも今後は、少しずつ薬価差益は確保できなくなるでしょう。
廃棄ロスと薬価改定ごとの逆ザヤ
繰り返しますが、中小調剤薬局では薬価差益は卸の温情程度になるでしょう。しかし、調剤薬局には廃棄ロスが必ず出ます。その額、調剤薬局全体で年間100億と言われています。今までもそうですが、今後はさらにこの廃棄ロスを減らす努力が必要となります。さまざまな廃棄ロスを減らすサービスが出てきているようですので、そういったものを適切に利用する必要があります。
また、薬価の改正前にどんなに在庫を絞ってもゼロにはできません。しかし、薬価が改正されれば下がった価格が適用されますから、確実に逆ザヤになります。適切に在庫管理をしていても1店あたり400万円ほどの在庫はあるようですから、薬価が下がった分だけ利益が減少します。
2019年10月の改定ではおおよそ3.2%の削減ということですから、1店舗で400✖️0.032=128,000円の逆ザヤが生じます。これが、今後毎年続くことになります。より厳格な在庫管理および廃棄ロスの削減が重要になります。
まとめ
今後を見据え、製薬メーカーも矢継ぎ早にリストラを断行しています。また、ジェネリック製薬も競争が激化していますから、売り上げが伸びてもそうそう利益に繋がらないようです。さらに、医薬品卸もギリギリの経営を続けています。
片や、調剤薬局はそうでもありません。
例えば、薬剤師の給与は大手チェーンが低い一方で、地方の中小店の薬剤師は大手より100万以上高いところがほとんどのようです。大手は人件費が抑えられる分、内部留保を着々と増やしてきました。逆に、地方の薬局は人手不足のために薬剤師の人件費が高騰し、ギリギリの経営が続いているようです。私がここ2〜3年で聞いた話で次のようなものがありました。
- 地方の調剤薬局に新卒で入社したら、2年目3年目と年収が下がり事務員にもボーナスが出なくなりました。そんな状況でも社長は派手に遊んでいたので、5年目に見切りをつけて転職しました。
- 調剤薬局4店舗のオーナー薬剤師ですが、雇用した薬剤師がすぐに辞めてしまうためどんどん給与が高額になり、自分の給与は勤務薬剤師より低くなってしまいました。また、まだ人手が足りないので休日当番はほとんど社長の私がやることになり、ほとんど休めません
まだまだ調剤薬局ではリストラというほどの状況には無いようです。
なお、中小調剤薬局は確実に薬価差益が減少します。これは間違いありませんが、大手チェーンも安心はできません。
あのアマゾンから佐川急便やヤマト運輸が手を引きました。同じように、利益が出ない取引を卸が拒否する時代が来るのかもしれません。人口減少で薬局が患者を奪い合うように、薬価差益というパイをメーカーと医薬品卸、調剤薬局が奪い合うことになるわけです。
いずれにしても、薬価差益が毎年減少していくことだけはマチガイありません。
【重要】
調剤薬局の収益=患者数×調剤報酬+薬価差益です。この内、調剤報酬と薬価差益は今後も一方的なルール変更が繰り返されますから、コントロールができません。一方で、患者数は経営努力次第で増えることもあれば減ることもあります。2019年、そんな経営者の力量が試される時代がやってきました。
この大きな経営環境の変化の波に乗り、大きく新規の患者数を増やそう。そう思われる方は、「キャッシュレス戦略セミナー2019」にご参加ください。
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