【重要】調剤薬局経営における薬剤師の人件費!求人での薬剤師の時給・給与はこれでいいのか?
東京・大阪・埼玉の調剤薬局の薬剤師の求人をみてみると、周りの状況が見えてきます。時給が大きく異なっていたりするものには何が違うのだろうと、薬剤師側は考えるでしょう。
他の薬局事情はというと、世の中の統計をみれば薄々と見えてきます。
ここでは、国が公表しているデータから、薬局がどのように経営をして、給与を出しているまたは決めているのか分析してみましょう。
経営者のかたであれば、当たり前の数字かもしれませんが、おさらいという意味で見るのも面白いと思います。
現在の薬剤師の時給事情
薬剤師は一般の業種に比べ、時給が高く設定してあるようです。時給でいえば、最も待遇が良いと言えるのはパート勤務の薬剤師かもしれません。
薬剤師の資格があるというだけで、パート勤務であっても比較的高めの時給で働くことができるからです。特に、勤務時間も比較的自由に設定することができるため、20代から40代の子供がいる女性薬剤師の方の応募が多く、人気が高い職種となっているのです。
つまり、午前中だけの勤務でも数時間でそこそこの給与をもらうことが出来るため、資格を活かしながら無理のない範囲で働くことが出来るとあって女性に人気の仕事であることはうなずくことができるといえるでしょう。
実査の求人の金額は、
東京・・・時給2000〜2500円
大阪・・・時給2000〜2300円
埼玉・・・時給2000〜3200円
と少しばらけています。
とくに大阪であれば、中心部は1500〜2000円程度、人が集まらない地域は3000円を超えるところがあります。
しかし、いずれにせよ2000円から高くて3000円が時給の相場のようです。
東京の最低賃金が980円(平成31年1月時点)から考えると、倍以上の金額ですので、一般的に高いと言えるでしょう。
しかし、薬剤師として、これを高いか低いかと考えるかどうかは人ぞれぞれです。
何故ならば、薬剤師になるためには前段階で費用がかかります。私立の薬学部は学費が高く、6年間で約1200万を超えます。
参照
国立の学費は6年間で350万円のため、他の学生などと比べ、就職時期が2年遅れ、なおかつ学費差分850万円マイナスがあります。
つまり、国民平均所得が420万円ですから
420×2+850=1690万円
ものマイナスからのスタートです。このことを計算に入れる必要があります。
薬局経営から薬剤師の時給を考える。
厚生省が統計調査を行なっていますが、その中に薬局経営に関することが出ています。
これは一般の方でも確認できるものですので、特に偏った考えではないということを付け加えておきましょう。
まず、現在の薬局の状況ですが、薬局収入のほとんどが、処方箋受付によるものです。
この、保険薬局の欄(P29)を見て見ると、売上構成比は保険調剤が2016年で97.2%を占めていることが確認できます。
【出典】第21回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告
- 平成29年 実施 -
中央社会保険医療協議会
平 成 2 9 年 1 1 月
そのうち、従業員の給与などに割り当てられる割合は平均16.9%とあります。金額にして2900万円です。果たして、これぐらいの給与が割り当てられているのでしょうか?
別の角度から見ていきます。
保険調剤が売上のほとんどを占めていることから、処方箋枚数からの売上を見ていきましょう。
この報告書のP20より
処方箋枚数の平均は、1299枚、中央値で1112枚のようです。
「かかりつけ薬剤師・薬局機能調査・検討事業」
かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査
報告書
最新(平成30年12月)の薬価差益は平均7.2%との報道がありますが、一般的に中小調剤薬局ではほとんど0に等しいと言われています。
仮に運良く差益があり、7.2%として計算すると、
より、1枚あたりの薬剤費6759円×7.2%=486円
技術料は1枚あたり2240円
合わせて2726円の純利益となります。
つまり、一般的な薬局の利益は、月に2726円*1112枚=303万円となります。
薬局の労働分配率は
のP19より約50%です。
つまり、利益に対して給与に割り与えられる金額は303万円*0.5=151万円です。
(福利厚生費などはここでは省いて計算しています)
先ほどの従業員への売り上げに対する割合が16.9%とありました。
処方箋一枚あたり平均単価がH28で8999円です。つまり、1枚あたり1520円となります。
先ほど1枚あたりの純利益が2726円でした。
その割合から考えると労働分配率は55%となり、従業員への売り上げに対する割合は実際16.9%よりも下回っていることがわかります。
ここで薬局の人員構成を見ていきましょう。
のP25より
薬剤師は常勤換算で、2.8人です。
「かかりつけ薬剤師・薬局機能調査・検討事業」
かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書
P27〜29より
登録販売者とその他の職員はそれぞれ常勤換算で、0.6人、1.4人ですので
合わせて平均2人の常勤職員が働いている計算となります。
より
最低賃金の全国加重平均額は874円です。
8時間労働で、月平均21日とすると、14万7千円。2人で29万4千円です。
管理薬剤師の平均給与は
P18より
年間766万円ですので、月63万8千円です。
第21回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告
(平成29年11月8日公表)の概要
先ほどの143万円から差し引くと、49.8万円が残ります。
これが、勤務薬剤師の給与となります。
平均勤務薬剤師は2.8人でしたので、管理薬剤師を除いた1.8人の給与ですので、
49.8万円÷1.8(人)÷21(日)÷8(時間)=1646円
これが時給となるはずです。
現在、調剤薬局は人手がたりていないところも多く、常に薬剤師を募集しているところも多いことから、良い条件で働くことが出来る条件の良さが人気の理由としていますが、この数字を見ると、枚数をしっかり裁くことができないと給与はもらえません。
東京では、職員の最低賃金は985円ですし、募集の場合は1000円〜1200円が相場のようですので、薬剤師給与に当てられる金額はさらに下がってしまいます。
さっきほどの処方箋枚数の中央値は1112枚でした。
これを薬剤師人数の2.8人で割ると397枚。日にち換算で、19枚程度です。
薬剤師1人あたりの処方箋枚数が議論として上がっていますが、その基準は1人あたり40枚。
19枚では半分以下の水準です。
つまり、薬剤師の人数に対し、しっかり枚数を集めることができている薬局では、収支金額が余裕がある。また、時給も上がりやすいとも言えます。
ですので、人手不足になってしまいやすい時間帯や求人を出しても人が集まりにくい場所などでは、時給が3000円にもなるということもあるのは、こういった事情があるからです。
薬剤師の数が比較的多く、働きたい薬剤師が多いと言われている大阪の中心部での時給が1500円から2000円程度であることを考えると、中心部ではなく通勤が不便な場所や車でなければ通勤できない場所などを選ぶ方が多くの収入を得られるということが考えられます。
調剤薬局は勤務時間がはっきりと決まっており、残業や夜勤が無いため、育児中の女性でも比較的働きやすい職場です。
どこか店が多い場所まで出ていかなくては求人がないのでは、というイメージがあるかもしれませんが、都心部に行くよりも自宅近くの調剤薬局の方が時給が高いという可能性がありますし、勤務時間が短くても時給が比較的高いので、短時間のパートなど余裕がある働き方でもまとまった収入を得ることができるという強みがあるのは確かです。
ですので、一般的な薬局で働こうとするのであれば、時給は1600円ほどは取れる計算ですが、流行っていない忙しくない薬局であったり、今からの時代の変化についていけない薬局での時給は下げざるを得ないと考えます。
まとめ
特に保険調剤がほぼ全ての収入源ですから、国の施作が変わればそれに合わせるしかありません。収入の上限も決まってしまいます。
薬剤師の業務には、調剤、創薬、販売があります。調剤だけに特化して今までは甘い汁を吸ってきた経緯があります。そのような時代は終わるという国からの警告は常々はっせられてきていますが、そのことに対して、本当に動いている薬局は少数です。
数字から見ても、時給2000円では、パートではいいかもしれませんが、年間で計算すると400万程度です。これは、日本国民の平均年収420万円を下回ります。
高い大学費用と勉学に使った時間を取り戻すには、この時給で良いのでしょうか。
経営者であれば、もっと高い時給を払ってあげたいと思っているはずです。であれば、経営状態を改善する努力を今から行いましょう。
なお、ほとんどの薬局経営者は調剤報酬のみに目を奪われているように感じています。調剤薬局の収益=患者数×調剤報酬+薬価差益です。そして、このなかで唯一経営者が経営努力でコントロールできるのが患者数です。したがって、患者数が増えなければ経営状況の改善は見込めません。
そこで、もし、そういった患者の教育についてのヒントが欲しい方は、私のクライアントが実際に使ったチラシの見本をプレゼントさせていただきます。別記事「誰にでもカンタンかつ低コストでできる、調剤薬局が新規患者を獲得する方法とは?」から無料でダウンロードできますのでお役立てください。
【重要】
調剤薬局の収益=患者数×調剤報酬+薬価差益です。この内、調剤報酬と薬価差益は今後も一方的なルール変更が繰り返されますから、コントロールができません。一方で、患者数は経営努力次第で増えることもあれば減ることもあります。2019年、そんな経営者の力量が試される時代がやってきました。
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