ウエルシアの調剤薬局併設店舗は1749店の69%。処方箋受付回数は17%もアップ!
ドラッグストア最大手、ウエルシアホールディングスの調剤販売が伸びています。
日本経済新聞の記事によると、2018年3~11月期の連結営業利益は約200憶円と、前年同期をわずかに上回ったようです。これは4期連続での最高益の更新です。
売上高は13%増のおおよそ5800億円。既存店売上高は5%増。期初から82店を新規出店しています。
ウエルシアの売上高と店舗数の推移
ウエルシアの店舗数と売上高について、平成28年2月期から今期31年2月(推計)までを確認してみましょう。まず、店舗数に相関して売り上げが伸びていることがわかります。
次に注目すべきは調剤売上高の伸びです。
店舗数は987から1,559店と57.9%増えていますが、調剤売上高は約764億から約1,257億円と64.5%も伸びています。これは、既存店の調剤売上が増えているとともに、調剤機能をもつ店舗比率が増えていることも想像できます。
調剤機能をもつ店舗比率と処方箋の受付枚数
ウエルシアで調剤機能をもつ店舗は、総店舗数1,749店の約69%だそうです。おおよそ1,075店。知らぬ間に、ものすごい数になっていました。この併設店の割合は1年前に比べて2%増えています。
その間、処方箋の受付枚数は約150万枚と17%も伸び、総枚数は1,000万枚弱に達しています。以下が前期と今期を比較した表になりますが、1店舗当たりおおよそ700枚前後の処方箋を応需していることがわかります。
ここで、あらためて注目すべきは調剤取扱枚数でしょう。新規出店が82店ですが、取扱店舗数は86店舗増えています。これは、調剤取扱店舗数の8%に上ります。
一方で、全店の処方箋受付枚数は17%も伸び、1店舗当たりの受付枚数も8%伸びています。このことから、ウエルシアにおいて調剤がいかに旨味がある事業なのかわかります。事実、調剤店舗数の伸びとともに、ウエルシアの営業利益率はどんどん改善しています。
ドラッグストアのビジネスモデルとは?
日用雑貨などを薄利多売することで集客力を高め、高利益率の医薬品や健康食品、化粧品などを購入してもらう。これが、基本的なドラッグストアのビジネスモデルです。
近年、その集客アイテムに食品を加えることで、ドラッグストアの集客力はさらに高くなっています。また、高利益率のアイテムに調剤が加わるようになりました。その結果、ここ3年でウエルシアの経常利益率は0.5%ほど改善しています。
ウエルシアによると、調剤の売上高粗利益率は4割弱。日用品が3割弱、食料品が2割弱。なかでも、調剤は値崩れもありませんし、他店との価格を気にする必要もありません。
ウエルシアでは、今期中に調剤機能をもつ店舗が70%を超える見通しです。また、2019年末に新規出店が集中していたとのことです。前期決算時、H31期の出店予定は127店舗と発表されていました。
今期の出店が82店でしたので、今期はあと45店の出店となります。すると、全店舗数は1,559+45=1,604店になります。そのうち、70%が調剤併設店ですから、1,604×0.7=約1,122店舗になります。
現時点で1075店舗ですから、47店も増えます。
1店舗が月に775枚の処方箋を受け付けていますから、単純計算でウエルシアの新規47店は47×775=36,425と、1ヶ月でさらに36,425枚も処方箋を応需することになります。これは、いったい門前何件分に相当するのでしょうか?
1500枚応需が平均モデルとするなら、おおよそ24店というところでしょうか?
患者がウエルシアを利用するメリットとは?
なぜ、ウエルシアがこれほど調剤事業を伸ばすことができるのか?と言えば、やはり集客力に尽きるでしょう。とくに調剤薬局における患者の不満第一位は「待ち時間」ですから、買い物をしている間に調剤が終わっていれば何も不満はありません。
また、そもそも患者の中で「この薬局でなければ!」という思いの人などいませんから、使い勝手が良ければどこでも構わないわけです。そういった点から、今までは門前での経営で調剤薬局は成り立ってきました。
ポイント付与も充実しています!
買い物で付与されるポイントも、ウエルシアの集客力のひとつです。貯まるポイントはTポイント。これは、調剤の支払いでも貯めることができます。
ただし、調剤は以下のようなポイントアップの対象外となります。
毎月15日と16日は「シニアデー」ということで、65歳以上のお客様はTポイントが通常の3倍貯まります。
月曜日にお買い物をすればTポイントは2倍貯まります。
さらに、レジ袋を辞退すればTポイントが2ポイント付与されます。
さらに、貯めていたTポイントは、ウエルシアで20日に使うとなんと1.5倍の価値になります。また、キャンペーンも充実しています。
ウエルシアのアプリを利用すれば、さまざまな商品のクーポンが使えます。また、Tポイントがたくさん付与されるケースもあります。また、これに加えてカードなどで支払いをすれば、さらにカードのポイントが貯まることになります。
このように、Tポイントを貯めることを消費行動の目的のひとつにしてる方がいらっしゃいます。そして、そんな人が処方箋を受け取れば、必然的にウエルシアに足を運ぶことになります。
今後、Tポイントに加えてLINEペイやペイペイなどのQRコード決済のポイント。さらに、2019年10月には消費税増税にポイント還元策が導入されます。現時点でもウエルシアにこれだけの処方箋が持ち込まれていることを前提にすれば、こういったポイント還元策の情報が上書きされることで、多くの患者が調剤薬局を選択する基準が変わることになります。
こういったことに危機感をお持ちの薬局経営者の方は、無料レポート「【保存版】遅くとも2022年までに訪れるであろう調剤薬局の景色とは?」をお役立てください。
新卒薬剤師がウエルシアをはじめとしたドラッグストアに就職している!
薬科大学生の多くも、他の学部同様に奨学金制度を利用して大学に通っています。そんな奨学金返済負担を軽減するため、このところ初任給が手厚いドラッグストアを就職先に選ぶ薬科大学生が増えているようです。
そういった背景もあり、ウエルシアをはじめとしたドラッグストアが薬剤師の確保を着々と進めています。また、先のようにドラッグストアの大量出店は続きますから、今後、中小に限らず大手チェーンもうかうかしてはいられない状況となっています。
とくに、パートで働くママ(女性)薬剤師の職場として人気が高い!
チェーン店で働くメリットとは、その労働条件がはっきりしていることです。そのため、仕事と子育てとを上手く両立させていけるママ薬剤師にとって、ドラッグストアは理想的な職場と言えるでしょう。
一方で、とくに小さなチェーン店の調剤薬局の勤務では、忙しい時間帯に抜けにくかったり、人手不足で休みにくかったりします。急な子供の発熱はもちろん、運動会や授業参観など子供の行事で休むことも気を使ってしまいます。
こういったことから、ママ薬剤師がパート先としてドラッグストアを選ぶ傾向が強くなっており、これもまたドラッグストアの調剤併設店増加の一因でしょう。
まとめ
記事中でご紹介したように、ウエルシアの受け付けた処方せん枚数は前年比で17%も伸びています。そして、過去3年の調剤売上高も次のような状況です。
この事実を前提にすると、今後もこの勢いは当分続くことになるでしょう。ですが、このグラフだとピンときませんから、処方せん単価1万円として推計してみましょう。すると、平成29年2月期で約200万枚以上、平成30年2月期で約170万枚以上となります。そして今期は150万枚以上増えています。
合計で、なんと520万枚。1ヶ月平均で520万枚÷12=433,333枚。これを平均的な調剤薬局が1店舗1,500枚の処方箋を受け付けていると仮定すれば、なんと3年間で288店分もの調剤薬局の売り上げがウエルシアのみに吸い取られたことになります。ならば、他のドラッグストアを合計したら、いったいどれくらいの処方箋が調剤薬局から吸い上げられているのでしょうか?
現在の集客力でこれですから、ネットワーク外部性の効果が市場環境に働きはじめる2019年の春ごろから、ますます調剤薬局の処方箋はドラッグストアに流れることになります。(わかるかな?)そういった意味でも私が予想する「【保存版】遅くとも2022年までに訪れるであろう調剤薬局の景色とは?」は、おそらくその通りになると今回の新聞記事からもそう思いました。
もう、時間はあまり残されていません。
適切な手段をもって、生き残りを図りましょう。
【重要】
調剤薬局の収益=患者数×調剤報酬+薬価差益です。この内、調剤報酬と薬価差益は今後も一方的なルール変更が繰り返されますから、コントロールができません。一方で、患者数は経営努力次第で増えることもあれば減ることもあります。2019年、そんな経営者の力量が試される時代がやってきました。
この大きな経営環境の変化の波に乗り、大きく新規の患者数を増やそう。そう思われる方は、「キャッシュレス戦略セミナー2019」にご参加ください。
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