消費税増税時、ポイント還元対象外となったドラッグストアはどう動くのか?想定してみました。
2019年10月に消費税が10%に増税されます。政府は、駆け込み需要による反動で景気の落ち込みを防ごうと、次のようなポイント還元策を実施するようです。
中小小売・飲食・宿泊 | 5%還元 |
コンビニ、外食、ガソリンスタンドなど 大手系列のチェーン店 |
2%還元 |
百貨店など大企業や病院、住宅など一部の除外業種 | 還元なし |
ドラッグストアは「還元なし」の除外業種に入りましたが、私はドラッグストアは2019年10月から次のような手を打つと想定しています。
独自に2%のポイントを還元する!
そして、この独自のポイント還元により、中小の調剤薬局に限らず大手チェーンも痛い目に合うと考えています。まあ、私の妄想の部分が大きいので、この話の結末は置いといて、私なら今後のキャッシュレス決済の進捗状況次第ですがあながちあり得ない話ではないと思います。
ドラッグストアが独自にポイント2%還元!
ドラッグストアが独自にポイント還元を決めるであろう理由には、大きくふたつあります。
- 大手スーパーもポイント還元の除外業種
- 調剤市場で存在感を増す好機!
さて、どういうことなのか?それぞれ確認しておきましょう。
ドラッグストアのビジネスモデルとは?
もともと日用雑貨を安値で販売することで集客力を高め、そこで高利益率の医薬品や健康食品、化粧品も購入してもらう。カンタンに言えば、このやり方でドラッグストアは成長してきました。そのため、今ではスーパーではティッシュペーパーやトイレットペーパー、洗剤などの日用品はスズメの涙ほどしか置いてありません。
そんなドラッグストアですが、何年か前から食品を強化してきました。例えば、2017年度、全国のドラッグストアの総売上額の23%が食品です。なかでも、九州地盤のコスモス薬品では、食品が売上高のなんと半分以上。以下にコスモス薬品の経営指標をまとめましたが、これを前提にすれば各社ともさらに食品を強化していくであろうことは想像に難くありません。
ドラッグストア大手4社の前期決算
コスモス薬品はドラッグストアで5番目の売上高を誇ります。そして、コスモス薬品より売上高が多いドラッグ大手4社の前期決算は次のような内容でした。
注目すべきはドラッグストア業界の過去3年間の平均増収率は4%ですが、食品の成長率は6%となっていることです。大手4社の食品販売比率はコスモス薬品と比較して大幅に少なく、この製品カテゴリーをより強化していくことは十分に想定できます。
ドラッグストアと大手スーパーの品ぞろえと店舗数は?
実は、大手スーパーに比べてドラッグストアの店舗数は圧倒的に多いようです。私もこの事実を認識していなかったのですが、例えばスーパーでもっとも店舗数が多いのはマックスバリュで約600店舗です。もっとも、イオンは490店舗もありますので、その傘下であるマックスバリュやダイエーなどグループ全体では優に1000店舗を超します。一方でドラッグストアですが、大手4社はすべて1000店舗を超えています。
食品の品ぞろえの点に絞ると、生鮮食料品を含めてスーパーの品ぞろえはドラッグと比較して多くなります。片やドラッグの食品は、取扱数はすくないもののスーパーに比べて価格が安く販売できるメリットがあります。そう、規模の論理で特売品を大量に買い付けることができるわけです。
両社は、どちらも増税時のポイント還元の除外事業です。したがって、もしスーパーが独自のポイント還元策を行えば、ドラッグは必ず追随することになるでしょう。一方で、ドラッグストアは調剤事業の拡大を狙い、独自にポイント還元策を実施するのではないか?と想定しています。
調剤事業の利益率は高い!
大手調剤薬局の売上と利益率(有価証券報告書から)などは次の通りです。先のドラッグストアの利益率は、粗利の低い日用雑貨や食品を含めてのものですから調剤のにおける利益率は比較的に高いことがわかります。ドラッグストアにとって、間違いなく調剤事業はうまみがあります。
したがって、ドラッグストアは消費税増税時におけるキャッシュレス化推進を好機と捉えているはずです。ここで集客力をさらに高めることで、調剤事業の強化を図ることができる。それは、おそらく次のような事態につながります。
キャッシュレス化推進による調剤業界の変化
- 地域の調剤専門薬局の経営状況が悪化
- キャッシュレスへの対応が遅れた薬局の経営状況は大幅に悪化
- 勤務薬剤師の転職が進む
- 中小調剤薬局の多くがさらなる人手不足に
- 勤務薬剤師の転職が激増
- 中小調剤薬局の多くが廃業
調剤専門薬局の経営状況が悪化して転職を考えるわけですから、勤務薬剤師の転職先の受け皿になるのはその多くがドラッグストアでしょう。また、そういった転職情報がさらに勤務薬剤師の転職を促すきっかけとなります。したがって、2019年10月は、ドラッグストアの調剤部門は大きくその売り上げを伸ばすはじまりの月となると想定しています。
現在の調剤薬局とドラッグストアの調剤事業規模は?
以下の表は、調剤薬局とドラッグストアの売り上げ規模ベスト10です。上位10社のうち、調剤薬局は9位にアインホールディングスが入るにすぎません。
では、調剤事業だけの売り上げを調剤薬局とドラッグストアで比較するとどうなるのでしょうか?以下が調剤薬局とドラッグストアの調剤事業のみの比較です。
いかがでしょうか?私は、ドラッグストアの調剤部門の売り上げが思っていた以上に大きいことに、正直驚きました。ウエルシアなど、すでに総合メディカルより調剤売り上げが大きくなっています。そこで、2018年度調剤報酬改定の影響です。
大手調剤薬局3社の第二四半期決算内容
以下は日本調剤とクオール、総合メディカルの平成30年度および平成31年度の第二四半期決算の内容です。ご覧のように、3社とも減益です。3社の事業にはそれぞれ特徴がありますが、とくに調剤報酬に収益を依存しているのが日本調剤です。そのため、第二四半期(通年の半分=半年)の準利益は4分の1に減少しています。
さて、こういった情報はどんなことに影響を及ぼすのか?というと、私は薬剤師の就職がもっとも影響を受けると考えています。
新卒および薬剤師の転職先がドラッグ中心となる!
日本調剤の第二四半期決算内容を前提にすれば、調剤に依存した大手調剤薬局の経営状況はおおよそ想像できます。また、今後も調剤報酬が増える方向に改正させることはあり得ません。むしろ、徐々に減る方向に変わることは否めません。
というより、今回の改正で基準調剤1がとれなければ実質地域支援加算がとれなくなったように、同じような改正が繰り返されることになると私は考えています。例えば、「かかりつけ薬局」や「かかりつけ薬剤師」が重視される流れは、集中率案件の強化につながることが想定できます。現在は2,000枚以上の薬局にのみ適用されているこの案件ですが、今後は1,500枚から1,000枚へと引き下げられていくことでしょう。
こういったことも含め、現在の調剤薬局の経営状況を前提にしても新卒薬剤師の就職先はドラッグストアが人気のようです。また、2019年10月以降、転職先でもドラッグストアの存在感が高まることになるでしょう。さらに、2020年4月の調剤報酬改定で、それは決定的なものになると思われます。
現在、ドラッグストアの調剤売り上げがこの程度であるのは、薬剤師が十分に確保できていないという要素がほぼすべてです。新卒および転職市場が活発化すればするほど、ドラッグストアが薬剤師を確保しやすい状況になるでしょう。つまり、2019年10月以降はドラッグストアが調剤部門の売り上げを伸ばす絶好のチャンスになります。
参考までに、2018年12月、私はある高偏差値の公立大学に通う薬学部の5年生3人(男1人女2人)と食事をする機会がありました。そのとき、彼らからの質問は「大手調剤薬局とドラッグストアのどちらに就職したらいいと思いますか?」というものでした。そこで、ここでご紹介したような話を伝えると、「やっぱりそうですよね!私たちもみんな第一志望はドラッグストアです!」と答えていました。
繰り返しますが、今後、転職を含めてこの流れは加速します。したがって、中小調剤薬局の薬剤師確保はさらに厳しいものになるでしょう。
まとめ
2019年10月からの調剤業界の想定
- 消費税増税時、ドラッグストアが独自に2%のポイント還元を行う
- 食品の品ぞろえを増やすことで、さらに集客力が高まる
- 増税時のポイント還元策で患者がポイントに敏感になる
- ワイドショーや雑誌で、ポイント関連情報が溢れる
- ドラッグストアで調剤を希望する患者が増える
- キャッシュレス化を怠った調剤薬局の患者が流出する
- そんな中小調剤薬局に勤務する薬剤師のドラッグストアへの転職が進む
- ドラッグストアの調剤事業をさらに強化する
- 新卒薬剤師がドラッグストアを勤務先に選ぶ
ここで重要なポイントを指摘しておきます。
キャッシュレス化推進のメリットとデメリット
- キャッシュレス決済を準備していても、必ず患者は流出します
- キャッシュレスへの備えを怠った薬局は、おそらくもたないでしょう
- でも、流出した患者すべてをドラッグストアがさばききれることはありません
- つまり、相当数の患者を自らの薬局に取り込める可能性があります
他の記事でも繰り返し指摘していますが、とにかく2019年は患者数を増やすことができる大きなチャンスです。それも、今後おそらく二度とないほどのチャンスになります。そして、このチャンスを活かせない薬局もまた、今後数年で退場を迫られることになるでしょう。
あくまでも私の想定ですが、もういちどドラッグストアの調剤売り上げを確認しておきましょう。
繰り返しですが、ドラッグストアの調剤売り上げがこの程度であるのは、薬剤師の確保が十分にできていないからにすぎません。その薬剤師が続々とドラッグストアに転職をはじめるようになる。それが、2019年末からの景色になる。
2020年4月、それは決定的なことになる。そのとき、中小調剤薬局は…
おおよそ、想像がつきますよね。
ですから、患者数を確保しましょう。
調剤報酬は、国が決める一方的なルールです。このルールに薬局は従わざるを得ません。そしてこのルールは、今後ますます厳しくなります。
その一方で、患者数の増減は経営努力次第です。経営努力を怠れば患者数は減少しますが、適切な努力をすれば患者数は増加します。
大きなチャンスが目の前に転がっています。
そこに気づくのかどうかも経営者次第。また、気づいてもそのチャンスを活かすことができるかどうかも経営者次第です。したがって、しっかり経営をされている薬局には良い時代がやってきます。
【重要】
調剤薬局の収益=患者数×調剤報酬+薬価差益です。この内、調剤報酬と薬価差益は今後も一方的なルール変更が繰り返されますから、コントロールができません。一方で、患者数は経営努力次第で増えることもあれば減ることもあります。2019年、そんな経営者の力量が試される時代がやってきました。
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