2019年から薬価が毎年改定!医薬品卸さんは嘆くが、調剤薬局も他人事ではありません!

2019年1月5日

年々減っていく薬価差益。それを補う収益の柱はありますか?

卸:「今後、私たちの仕事は無くなる可能性があります。」

私:「どうしてですか?」

卸:「国が薬局の仕入れ値を一律に管理する可能性があるからです。そしたら、薬が郵便物と変わらなくなります・・・。」

私:「そうなると薬価差益もなくなりますね・・・。潰れる薬局がでてきますね。」


ここでの話はあくまで卸さんの予想ですが、「こうなってしまったら大変だ!」と想像して準備しておくことが薬局に限らず経営では当然の話です。

では、質問です。薬価差益がなくなって今と同じような経営ができる薬局はどれくらいあるのでしょうか?

ほとんど皆無だと思います。

特に大手チェーン薬局は薬価差益で優位性が保たれていますので、それがなくなったら大打撃です。それがわかるのが、厚生科学審議会の議事録です。大手チェーンがもうけ過ぎ!というニュアンスのものが毎回のように飛び出してきます。今後の政策は大手の報酬を減らす流れで間違いはないでしょう。

一方、中小の薬局は安心かというとそうではありません。大手に取った対策が数年後中小にも適応される流れでまず間違いありません。

理由は、厚生局は門前薬局のビジネスモデルをなくそうと必死だからです。

いつから薬価に対して国が対策を出してくるのか?

以下日経新聞2018年9月12日の記事です。

18年度予算編成では、診療報酬のうち薬価などの改定率を‐1.45%とし、1600億円弱の財源を捻出した。

年間の医療費の総額は40兆円規模。診療報酬を1%下げれば、国の負担は約1000億円抑えられる。

(中略)

厚労省と財務省は19年度予算編成での薬価下げが必要との総論では一致している”

2つの大きな行政機関の方針が一致しているのであれば、間違いなく薬価改定は行われるでしょう。

さらに、記事では

“社会保障の自然増は概算要求時点で6000億円。年末予算編成でどこまで圧縮できるかが焦点。

 

圧縮幅について、厚労省は5000億円程度にとどめたいが、財務省はさらに深堀りを迫る構え“

国のお金を管理しているのが財務省ですから、ここでは財務省の意見を採用すると、

毎年、1%以上薬価を下げる・・・。ということです。

板挟みで苦しむ医薬品卸の利益率はわずか約1%

薬局に限らず、暮らしに欠かせない医薬品卸ですがその営業力率はわずか約1%です。そのため、各社は常に変革を迫られています。

医薬品卸の四重苦!

  • 人手不足
  • 毎年になる薬価の引き下げ
  • 製薬企業からの卸値の引き上げ
  • 医療機関や薬局からの値引き要求

そのため、医薬品卸は物流拠点の効率化を推進しています。

例えば、医薬品は大きさや形状、重さなどが製品ごとに異なるため、従来は箱詰めは人手頼みでした。そこに人手不足が重なったことで、入庫から出庫までの全工程をほぼ自動化し、従来の4~7割程度の人員で機能する物流拠点の整備を進めています。

今後、毎年続く薬価の引き下げはボディーブローのように…

今(2018年)から薬局利益が薬価差益の1%ずつ減っていけば、どうなるでしょうか?

しかも、毎年です。それに、調剤報酬改定で点数が取れなくなったら・・・。消費税が増税になったら・・・。

「薬局の未来が明るい」と間違っても言えないはずです。

現実に消費税が増税される来年2019年の10月、薬価の改定が決定しました。

3.2%の切り下げのようですが、今後、その都度在庫に対して逆ザヤが生じます

私のお店では、おおよそ在庫が400万円あります。これでも社長の指示でギリギリに絞っていますが、これに約3%かけると12万円。薬価改定の都度、おおおよそこれくらいの逆ザヤがでてしまいます

今までは2年に1回でしたが、今後はこれが毎年になります。かつ、年間の薬価差益もじわ~っと減ります。ただ、この総額はどれくらいなるのか正直、計算に疎い私にはわかりません。

でも、逆ザヤと年間で減少する薬価差益を合算すれば、少なくとも事務員さん1か月の給料くらいは吹き飛ぶことは容易に想像できます

う~ん。どうなっていくのでしょうか?

卸さんの気持ちもわからないではありませんね。

効率化と強固な物流の両立を目指す医薬品卸に学ぼう!

医薬品卸が強固な物流を効率的に運営する努力を続けている一方で、薬局はどうでしょうか?意外なほど、薬局運営の効率化に無頓着な経営者が多いと私は感じています。

例えば、人手不足は医薬品卸に限りません。中小調剤薬局で薬剤師不足が慢性的に続いていますが、医薬品卸が物流拠点の自動化を進めるような経営の効率化を図っているでしょうか?例えば、薬剤師2人分の働きをする全自動分包機があります。また、ピッキングの手間を大幅に減らすことのできるPTP除包機や全自動薬剤払出機といったものもあります。

これらは、とくに介護施設など一包化が多い薬局への導入は必要不可欠です。その一方で、介護施設の処方箋応需が多い薬局はとくに注意も必要です。その理由は、介護施設で回している調剤薬局は、2020年の調剤報酬改定前に注意しておきましょう!薬剤師の人件費より安い!薬剤師2人分の働きをするEser(錠剤全自動分包機)!?で指摘しました。

薬局に勤務する者たちの処方箋を集中率案件から外されたように、介護施設の処方箋もまた、今後の調剤報酬改定で集中率案件から外されると考えるのが自然でしょう。また、後者のような全自動分包機の普及は、日数加算や一包化加算の減額または算定自体がなくなるという流れとなるのも容易に想像できます。

また、今後はスマホなどを利用した遠隔診療が進ことになります。詳しくはオンライン服薬指導で処方薬が自宅に配送される時代がすぐそこに来る!としたら…をお読みいただきたいと思いますが、要は、スマホから薬局に処方せんが送信され、自動でレセコンに入力。さらに、それに連動して全自動分包機が稼働する。こういった自動化への設備投資ができない薬局は、ほぼ例外なく淘汰されていくことになります。

重要なのは、上述の流れに薬剤師の介在は必要ないことです。薬剤師の仕事は、一方化された薬の監査のみとなります。また、すでに薬剤の監査をする機器も徐々に普及しているようです。

こういった事実をひとつひとつ重ねると、今まで調剤薬局で薬剤師が行っていた仕事のほとんどがなくなります。ならば、日数加算や一包化加算が調剤報酬から消えることも自然な流れではないでしょうか

まとめ

薬価の引き下げによる薬価差益の減少。

これは、単に調剤薬局の利益が減少する。という一点だけの問題ではないことがお解りいただけたことと思います。

医薬品卸が生き残りのために経営効率化を図るように、調剤薬局が設備投資を行うことは必要不可欠です。そして、この設備投資ができない薬局は、勤務薬剤師の離職が進むことになるでしょう。また、今後は次のような調剤報酬が無くなることが予想できます。

算定不可報酬

  • 後発品加算
  • 日数加算
  • 一包化加算

私は、これが2022年に現実問題となると想定しています。処方せん一枚当たりの利益が1,000円ほど減少しますから、薬局経営には大打撃となるでしょう

その意味で、さまざまな記事でご紹介していますが、2019年10月に行われる消費税増税はチャンスです!もちろん、その意味がわかる薬局経営者に限りますが…。

私がクライアントから話を聞く限りですが、幸いなことにほとんどの薬局経営者はこの緊急事態に気づいていないそうです。また、緊急事態であることもわかっていないようです。ですから、この意味がわかる薬局経営者には、おそらく今後二度とないであろうチャンスとなります。

調剤薬局の収益=患者数×調剤報酬+薬価差益

調剤薬局がコントロールできる部分は患者数のみである。この理解ができる薬局経営者に良い時代がやってきます

2019年10月、患者数をコントロールできる。そんな経営能力のある経営者の調剤薬局だけが生き残る時代がやってきました。それに間に合うよう、今すぐ適切な手立てを講じてください。

きっと、うまくいくよ!