介護施設で回している調剤薬局は、2020年の調剤報酬改定前に注意しておきましょう!
介護施設で回している(集中率緩和)薬局は注意が必要です!
大手や中小を含め、介護施設の処方箋を獲得しようと躍起になっている薬局が少なくありません。
そう言う私のクライアントにも施設の獲得はお勧めしており、徐々に成果を上げています。先日も、今まで処方せんを受けていた調剤薬局が涙目で、「どうしても他の薬局に変えてしまうのでしょうか…」と言われたと、施設オーナーが苦笑して話をしてくれました。
まあ、ほとんどの薬局はセールスを知りません。一方で、私のクライアントはセールスを学んでいますから、その差は歴然としています。また、今後のキャッシュレス化の普及により、違った角度から介護施設の集客が可能になると想定しています。
前置きが長くなりましたが、私は介護施設の獲得はお勧めしている一方で、クライアントには次のような指摘もしています。
集中率の目標
- 2020年改正時に集中率80%
- 2022年には集中率75%
- 2024年には70%
重要なのは、この集中率に介護施設の処方箋をカウントしないこと。つまり、介護施設を獲得したとしても門前の処方箋としてカウントし、その上で集中率の目標を達成するようにお願いしています。
幸い、増税時のポイント5%還元策により、この目標を大幅に前倒しで達成できると想定しています。
2018年の調剤報酬改定で何が起きたのか?
2018年度の調剤報酬改定では、集中率について次のような変更がなされました。
特掲診療科の施設基準等及びその届け出に関する手続きの取り扱いについて
- (3) 特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合は、特定の保険医療機関に係る処方箋の受付回数(同一保険医療機関から、歯科と歯科以外の処方箋を受け付けた場合は、それら を合計した回数とする。)を、当該期間に受け付けた全ての処方箋の受付回数で除して得た値とする。
- (4) (3)の計算に当たり、同一グループの保険薬局(財務上又は営業上若しくは事業上、緊密 な関係にある範囲の保険薬局をいう。以下同じ。)の勤務者(常勤及び非常勤を含めた全ての職員をいう。)及びその家族(同一グループの保険薬局の勤務者と同居又は生計を一にする者をいう。)の処方箋は、特定の保険医療機関に係る処方箋の受付回数及び当該期間に受 け付けた全ての処方箋の受付回数のいずれからも除いて計算する。
引用元:平成 30 年3月5日(特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(通知) 保医発 0305 第3号 <P195>
ここに書かれたことと、そこから想定する今後は…
- 今回から、働いている職員とその家族の処方箋はカウントしないよ!
- それでわかると思うけど、今後は効率よくとれちゃっている処方箋(介護施設)はカウントしないようにしていく予定。よろしく!
まあ、当然の話ですよね。
介護施設の処方箋は集中率から除外される!
「え~、そんなことになど…」
そんな声が聞こえてきそうですが、再三申し上げているように、本来ビジネスとはそんな想定をし続けていくものです。そういった甘い想定を元に経営をするのも自由ですし、私のような厳しい想定を元に経営をするのも自由です。
ですが、このふたつのケースで経営を行っていたら、その後の業績はどちらがどうなるでしょうか?まあ、答えるまでもありません。
経営の基本
- 最悪の事態を想定する
- それに対処する打ち手をできる限り考える
- そのすべてを行動に移す
ずっと、永遠にこういった「想定と行動」をくり返すのがビジネスです。そしてそれでも、すべての打ち手がうまく行かないのが普通です。また、そこで思考を止めた会社は退場を迫られることになります。
したがって、介護施設の処方せんが集中率にカウントされないことを念頭に、今後の活動を強化していく必要があります。
ミュレートしておきましょう!
「ギリギリで、3月末にならないと85%を切れるかどうかわかりません!」
平成29年の2月、1か月の処方せん枚数が2000枚を超える調剤薬局の話ですが、29年度末に集中率が85%になるという話で経営者の方は気をもんでいました。
そりゃそうです。
- 基本料1:41点 ×2000枚=820,000円
- 基本料2:25点 ×2000枚=500,000円
差額32万円。
もし基本料2になっていたら、これだけで年換算384万円の減益ですから。
幸い、昨年の1月よりある取り組みをはじめていましたので、本当にコンマの差で運よく84.7%という僅差で、今年度は基本料1で営業を続けることができました。
この薬局はメインの通りから奥に入ったところにあり、本来はこの取り組みがうまくいかない立地でした。ですが、ある特別なメリットがあったため、それを前面に打ち出すことであっという間に処方せんを増やすことができました。
が、よくあることですが、この薬局の経営者には危機感がありません。なんと、85%をクリアしたらせっかくのこの取り組みをやめてしまいました。
おそらく、次回改正でこの薬局は相当なダメージを受けることになるでしょう。というのも、この薬局は次のような経営状況だからです。
現在の経営状況
- 処方せん枚数:2000枚強
- 基本料1:41点
- 地域支援体制加算:35点
- 介護施設からの処方箋:150枚
- 経常利益:5%
つまり、もし今回この取り組みをしていなかったら…(41+35―25)×2000=1,020,000。年間で1,224万円の減益でした。そして私はこの経営者の方に、今後の改定についての想定もご紹介しています。
次回改定の予想
- 次回以降、さらに集中率が強化される
- 介護施設の処方せんが集中率から除外される
そんな私の話に対し、彼の返事は次のようなものでした。
「そんなに厳しくなったら、ほとんどの中小薬局はやっていけなくなってしまう。それはないと思うな~」
もし、本当に施設が集中率から除外されれば、この薬局の集中率は一気に90%を超えてしまいます。ならば、先のように年間で1200万以上の減益ですから、おそらく利益は吹き飛んでしまうでしょう。
「そんなにひどい改正にはならないと思う!」
正直、私はこの反応に驚きました。というか、あきれてしまい、この経営者と付き合っていく気持ちが一瞬に失せてしまいました。話をするのも馬鹿らしくなり、「あっそう…」と、一言つぶやきその場を去りました。
帰宅後、すぐに強制退会をしていただいたことは説明するまでもないでしょう。
「ひどい改正ではなかった!でも、ひどい改正を想定して手を打っていてなおさら経営状況が良くなった!」
経営者とは、こうでなくてはいけません。
でも、考えてみればラッキーですよね?だって、今後の想定について、先のように楽観的に考える経営者がいるんですから。おそらく彼は、
この薬局が基準調剤1を維持できたのは…
- 自社の薬局が集中率案件をクリアできた
- それが、自社が他の薬局から患者さんを奪ったから
- 他の薬局に同じことをされたら、自社の客は奪われることになる
こんな想定すらできないわけですから。
したがって、ご紹介している取り組みすら行動に移すのは2割ですが…
その取り組みを持続し、試行錯誤を重ねて
工夫し続けるするのはその中の2割にすぎません!
つまり、やったもの勝ち!
要は、行動に移すか?それとも…。その選択がすべてなのです。
まとめ
もし、介護施設の処方せんが集中率から外されなかったら…。
ラッキー!
単に、それだけのことです。
ですが、集中率に限らず、国の方針は明らかです。それは…、汗をかかずに手に入る点数は減らすよ!
今後、日数加算や一包化加算など、減額されることは想像に難くありません。また、後発品加算も国の目標80%が達成されたらどうなるでしょうか?
あなたが国の立場になって考えたら…?
私なら、「今回から、80%越えなら5点(このご褒美が減る)あげるけど、頑張っていない60%以下の薬局はマイナス〇点ね!50%以下ならさらにマイナス×点ね!」と決めます。あなたの想定は、私とは違いますか?
まだ間に合います。介護施設の処方せんがカウントされないことを想定し、なんらかの取り組みをはじめることをお勧めします。
【重要】
調剤薬局の収益=患者数×調剤報酬+薬価差益です。この内、調剤報酬と薬価差益は今後も一方的なルール変更が繰り返されますから、コントロールができません。一方で、患者数は経営努力次第で増えることもあれば減ることもあります。2019年、そんな経営者の力量が試される時代がやってきました。
この大きな経営環境の変化の波に乗り、大きく新規の患者数を増やそう。そう思われる方は、「キャッシュレス戦略セミナー2019」にご参加ください。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません