ドミノ倒しのように調剤薬局の経営を悪化させる市場環境の変化がもたらす未来とは?
調剤報酬と薬価差益に依存した調剤薬局の収益モデルは賞味期限を迎えました。また、今後デッドラインに突入していくことは想像に難くありません。さらに、そのデッドラインは市場環境の急激な変化で、想定よりもはやい2019年に訪れることになります。
勘の良い経営者なら「2019年」で気づいたと思いますが、市場環境の急激な変化とは2019年10月の増税時に施行されるキャッシュレス決済の推進です。ですが、薬局経営者のほとんどは、薬局経営を左右するであろうこの政策の意味を正確には理解していないようです。
ポイント
- キャッシュレス決済に対応しない薬局では、患者が劇的に流出する
- キャッシュレス決済に対応しただけでは、やはり患者は大きく流出する
- キャッシュレス決済にレバレッジをかけて、やっと現状維持
- キャッシュレス決済を戦略的に落とし込めば増益が見込める
重要なのは、この市場環境の大きな変化を乗り切るには準備期間が長ければ長いほど有利であるという事実です。逆に、この市場環境の変化に対応しなかった薬局が受ける影響とは、調剤報酬改定の比ではありません。立地などにより温度差はありますが、ある程度の都市部の薬局は3年持たないと想定したほうがいいでしょう。
なぜなら、私のクライアントである薬局の方々は、すでに2018年の春からこのキャッシュレス化を逆手にとった施策を実行しています。また、この取り組みにより、すでに着実に門前外の処方箋が毎月増え続けています。さらに、次のような事実はすでに見聞きしていらっしゃるはずです。
ポイント
- 2019年10月の増税時からキャッシュレス決済に対し5%のポイント還元
- 2019年3月終了予定のPayPay利用で20%還元キャンペーンが9日間で終了
- PayPayのキャンペーンにLINE Payが追随。2019年12月末まで20%還元
さて、ここまでの話でも経営者の理解に温度差があることは承知しています。
なぜなら、人は同じものを見ても、そこで見えるものや見え方に大きな違いがあるからです。まずは、そこから理解してください。
まずは、重要な質問です!
旅行などに出かけたとき、薬剤師であるあなたにはその街の薬局が目に入りませんか?また、調剤薬局などを見つけると、ついつい店内などを覗いたりしているはずです。
その一方で、歯医者や美容院など他業種(お土産屋さんなどは除く)はどうでしょうか?
旅行先や街に買い物に出かけてもほとんど目に入らず、記憶に残ることもないでしょう。でも、実際には薬局より歯医者や美容院ははるかに数が多く、美容院など薬局の約4倍もの店舗数があります。
- 薬局:約59,000
- 歯医者:約69,000
- 美容院:約240,000
- コンビニ:約55,000
これでお分かりいただけたと思いますが、人は自分に関連する情報は目に入りますが、そうでなければ見ていても見えません。薬剤師だからこそ、旅先で薬局が目に入ります。一方で、他業種の方が旅先に出かけても、決して薬局など目に入ることはありません。
実は、私がクライアントに提案した集客法とは、この「見ていても見えていない」という単純な事実に対してレバレッジをかけた施策です。これは、「聞こえていても気づいていない」と言い換えることもできます。
消費税増税時に繰り返されていたふたつの事実!
過去の増税時、次のふたつが繰り返されていたことを覚えていますか?
- 増税の2~3か月前から「消費税増税反対!」のデモが繰り返された
- 同じく2~3か月前から駆け込み需要が発生した
このように、人はギリギリにならないと聞こえていても気づきません。これは、気づいていても動かないと言い換えることもできます。
では、あなたはこの事実をどうとらえますか?
私はクライアントである薬局経営者の皆さんにこの事実を紹介し、大きなチャンスがくると説明しました。また、この話が見えた(理解できた)からこそ、クライアントの皆さんも先のように2018年の春から種を蒔き始めています。
物事の理解とは理不尽なものです。その人のもつ知識や経営の力で、こんなカンタンな話でも人により見え方が違います。したがって、この話が見えた(理解できた)かどうかで?また、その上で適切な行動をしたかどうか?で、その経営者の薬局の運命は決まることになります。
ここで私の想定をご紹介しましょう。
キャッシュレスに対応しない薬局
- 増税後3か月後、2020年の1月に前年比で患者が2割流出
- 増税後1年、2020年の9月は前年比で患者が4割以上流出
キャッシュレスに対応した薬局
- 増税後3か月後、2020年の1月に前年比で患者が1割流出
- 増税後1年、2020年の9月は前年比で患者が2割流出
この想定は地域で温度差があります。とくに近隣に調剤部門が併設されているドラッグストアがあるのなら、たとえキャッシュレスに対応しても患者の流出は避けられないと私は想定しています。
この想定を大袈裟ととらえる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私はある高偏差値の公立薬科大学の学生3人から次のような相談を受けました。
私の想定はここまでの話の通りですから、その答えは明確です。この話は大手チェーンにも当てはまると考えていますし、大手チェーンの立地の多くは都市部でしょう。したがって、大手チェーンはドラッグストアの影響で大きく患者数を減少させると考えています。
このように、薬学部の学生レベルでも調剤薬局の将来を肌で感じ取っています。また、重要なことですから、ここで一言申し上げます。
最悪の事態を想定し、適切な手立てを講ずるのが経営です!矛盾するようですが、ここで紹介していることは最悪レベルの想定です。必ずしもそうなるとは限りません。しかし、客数が今以上に減少することは確実です。今現在、近隣にドラッグストアがあるのなら、前年比で3~5%患者数が減少しているはずです。ならば、キャッシュレス決済の普及により、それが1割以上になることは避けようもありません。
また、経営とは最悪の事態を想定を前提とします。最悪の事態を想定し、それに対する適切な手立てをできる限り多く考える。そして、その手立てをできる限り早く行動に移すこと。これが経営に求められるすべてといってもいいでしょう。
ですから、キャッシュレス決済に対応しても2割減は大袈裟かもしれません(私はそう思っていません)が、それを想定して行動したことで業績が上がるならそれにこしたことはありません。逆に、この影響を無視したり、過少に考えて対策を取らず、業績が落ちるほうが困ります。こういった思考での経営を心掛けましょう。
この経営についての理解をしていただいたところで、本題に入りましょう。
政策誘導の強烈なパワーとは?
過去の消費税増税時は、その前に駆け込み需要が生じる一方で、大きな反動減が起きて景気がひどく落ち込みました。政府はそれを教訓に、消費税を10%へ引き上げるのに合わせ2兆280億円を投じます。
その柱となるのがキャッシュレス決済した消費者へのポイント還元で、中小の小売店や飲食店などでキャッシュレス決済すると5%分のポイントが還元されます。なんと、2%の増税分を超えるポイントが付与され流ことになります。
※ 調剤はポイント還元の対象外です
この政策の裏にあるのは?
このポイント還元の表向きの狙いは、次のふたつです。
- 増税による景気の落ち込みを防ぐ
- キャッシュレス化の推進 – 省力化による人手不足対策
一方で、この政策の裏にあるのは徴税の強化です。このポイント還元はマイナンバーを紐づけする必要がありますから、国はキャッシュレス化を推進すればするほどお金の流れを容易にチェックできるようになります。
ポイント還元策は、後の徴税強化につながりますから国も本気です。また、政策誘導のパワーは強烈です。それを身をもって体感したのが調剤薬局経営者の方々でしょう。
「薬漬け医療からの脱却!」という政策誘導に乗り、「これは儲かる!」と多くの薬剤師が調剤薬局を設立してきました。残念ながら、その政策はすでに方向転換されましたから、今後は逆に厳しい未来が待っていますが…。
その話は今回はここまでにしますが、政策誘導の恩恵を余りあるほど受けてきたのが調剤薬局経営者の方々です。そう聞けば、今回のポイント還元策の流れがどれほど重要なのかご理解いただけると思います。
政策誘導を先取りした覇権争い!
2018年の12月、PayPayが20%の還元策を実施しました。PayPayは100億円の予算を組み、当初は2019年の3月までこの施策が継続すると想定していたそうですが、実際にはわずか9日ほどで予算は消化されてしまいました。
が、PayPayでは、今後もキャンペーンを実施すると発表しています。また、PayPayがこの大盤振る舞いを発表した後にLINE Payも追随。2018年12月末まで同じく20%還元策を実施しました。
このように、政府の政策に便乗し、さまざまな企業が一気にキャッシュレス業界の覇権を握ろうとしています。したがって、今後も政府のポイントとは別に企業によるポイント還元策が実施されることになります。
既存のポイントも忘れてはなりません!
国の政策では、増税時にキャッシュレス決済をした人に5%のポイントを還元することになります。しかし、キャッシュレスで得るポイントはそれだけではありません。例えば…
ポイント
- クレジットカード利用時のポイント
- 楽天Edyなど電子マネー利用時のポイント
- PayPayやLINE Pay利用時のポイント
- 会社の経費など広告サイトのポイント
これらのポイントは重複して貯めることも可能です。例えば、楽天Edyを利用すると楽天ポイントが貯まりますが、クレジットカードから楽天 Edyへチャージをすることでもポイントが貯まります。そう、ポイントの二重取りが可能です。
また、コンビニやドラッグストアなどの大型チェーン店では、楽天ポイントやTポイントなど共通ポイントを貯めることができます。先のクレジットカードからチャージをした楽天Edyを利用すれば、この段階でポイントの三重どりができることになります。ここに5%の還元が重なりますから、少なくとも7%のポイントが貯まります。(国の還元5%、クレジットカードチャージ1%、楽天Edy0.5%、共通ポイント0.5%)
さらに、私が会社の経費と家庭での利用でお勧めしている広告サイトを利用することでもポイントが貯まりますから、さまざまな組み合わせてポイントを二重取り三十取りできることになります。
マスコミのアナウンス効果も忘れてはなりません!
2019年の4月から、テレビのゴールデンタイムやワイドショーではポイントの貯め方を説明したアナウンスが繰り返されることでしょう。とくに7月以降はそれが加速し、9月などその話題でもちきりになることに疑いはありません。また、そんなお得なキャッシュレス決済の組み合わせや使い方が説明された記事が、雑誌や新聞に掲載され続けることになります。
さらに、先のようにキャッシュレス決済の覇権争いも激化します。テレビコマーシャルや雑誌の広告なども、そんなポイント還元策が花盛りとなるのかもしれません。
このような事例が重なりますが、あなたはそれでも現金決済を選択しますか?
私なら、この還元率なら絶対にポイントを貯めるように行動します。また、同じような選択肢があるのなら、キャッシュレス決済が可能なお店を必ず使います。あなたは、これだけの条件が揃っていてポイントに反応する方をマレだと思いますか?
私はそうは思いません。
これだけの条件が揃えば、おおよそ2割の人は強く反応すると考えています。パレードの法則とか20対80の法則などで表現されますが、おおよそ2割が国の政策および政策に便乗している企業のポイントに強く反応します。また、そんな人が身近にいれば、その知り合いも行動を共にすることになるでしょう。
したがって、国が目標とする40%は2020年に達成できると想定します。なぜなら、お隣の韓国では同じような政策により、わずか3年でキャッシュレス化が80%以上まで普及したからです。
繰り返しますが、あなたはそれでもキャッシュレス決済を利用しませんか?
おそらく、あなたの想定は間違っています!
- 調剤薬局もキャッシュレス化の推進に対応する必要がある
- しなければ、患者が流出することになる
これは、なんとなくでもイメージできたと思います。しかし、おそらくですが、あなたが想定している未来は間違っています。
というのも、現在の日本はキャッシュレス率が20%です。そして、2019年10月の増税時のポイント還元策などにより、私はさらに20%の人が1年のうちにキャッシュレスを選択すると考えています。
こういったことから、調剤薬局に影響を与えるのは今後動き始める約2割の人の人たちだ。そう言いたいところですが、そうではありません。
実は、2019年10月以降、調剤薬局をキャッシュレスで選ぶ可能性がある人とは国民の4割に上ると想定されます。どういうことなのか?詳しく見ていきましょう。
キャッシュレスに対応している調剤薬局の割合は?
都心部の薬局におけるクレジットカードへの対応は、以下のようになっています。
- 東京都 → 6,574店舗中 3,089店舗 46.99%
- 神奈川県→ 3,826店舗中 1,700店舗 44.43%
- 埼玉県 → 2,823店舗中 1,239店舗 43.89%
- 千葉県 → 2,416店舗中 1,118店舗 46,27%
(2018年9月現在)
都市部で4割強ですが、カード支払いは手数料が3%程度はかかるため中小店の登録は少ないと思われます。また、そんな理由もあってか、患者にカードが使えるという情報を提供していない傾向があるようです。以下がその根拠です。
ある大手企業の子会社が運営するサイトの情報
ある有名大手企業の子会社が運営するサイトでは、情報としてクレジットカードと電子マネーが利用できる薬局が掲載されています。以下の表でわかるように、先のクレジットカードの導入率と比較して圧倒的に少ない掲載率です。したがって、あえて薬局側がキャッシュレス対応情報を載せていないと考えられます。
県別のクレジットカードおよび電子マネーが利用できる薬局数
全国平均でクレジットカード が使えるという情報を掲載している薬局が5%。、電子マネーが約2%です。
クレジットカードに限ると掲載率が1%未満の県は青森と栃木、福井、広島、山口、徳島、佐賀、長崎、熊本、宮崎、沖縄の11県。鳥取県と高知県に至っては、導入率が0です。また、電子マネーの掲載率は軒並みクレジットカードを下回っています。
少し話はずれますが、今後の調剤報酬改定では対人業務の量と質が問われることになります。具体的には在宅ですが、逆に言えば作業の点数は今後は確実に減額されます。とくに日数加算や一方化加算については、分包機などの仕事として大きく減額されることになるでしょう。キャッシュレス化の推進も同じレベルで考えるべきでしょう。
余談ですが2018年の12月初旬、この都道府県別のキャッシュレス決済導入率の表を見せた時、私のクライアントたちの嬉しそうな顔といったらどう表現したらいいのでしょうか?まさしく、満面の笑みを浮かべていました。
この表からどんな想定をしましたか?
とても重要なことですから、この話から何が起きるのか?想像してみてください。
- 現在の日本はキャッシュレス率がおおよそ20%
- 調剤薬局におけるキャッシュレス対応率が全国平均で5%
- 増税時の5%還元により、キャッシュレス決済が普及する
増税によりキャッシュレスを使い始める人は、1年で20%を超えるという私の想定はお話ししています。ですが、表からお分かりのように、現在キャッシュレスに対応している薬局は全国で5%にすぎません。ということは…
今現在キャッシュレスを希望している人のほとんどが、それを使えずにガマンしていることになります。
わかりますよね。つまり、2019年10月の消費税増税時には…
20%+α%=30~40%
少なくとも、これだけの人が一気にキャッシュレス決済に対応する薬局を選ぶ可能性があります。もちろん、10月以前よりテレビや新聞、雑誌などでそういった情報が氾濫しますから、それ以前から少しずつ動き始めることでしょう。
したがって、私の「キャッシュレスに対応していない薬局は、2020年の1月に2割以上の患者が流出している」という想定は大甘である可能性も大です。
駅前商店街を思い出しましょう!
私が指摘するまでもなく、ポイント関連の情報は会社やママ友などからすぐに伝わります。さらに、国の5%還元策が続く限り、先のような企業のポイント還元策も続くでしょう。もちろん、テレビや新聞、雑誌でポイント利用についての特集も同じです。
- 既存のキャッシュレス利用者が20%
- 新規にキャッシュレス利用を選択する人が20%
国民の約4割が行動パターンを変える可能性が大ですから、その影響は並大抵のものではありません。その一方で、どうしてもその想定が腹に落ちないのも事実です。そしてそんなとき、私たちは過去の教訓からヒントを探すべきでしょう。
例えば、私が子供のころは駅前の商店街には多くの人が買い物をしていました。しかし、今ではシャッターが閉まったままの店がほとんどで、歩いている人などほぼいません。
また、昔はお菓子などはお菓子屋さんで購入するものでした。しかし、いつの間にかそれはスーパーに変わり、その後はコンビニ、今ではドラッグストアと購入先はどんどん変わりました。
お酒などもそうですね。私はビールを飲みますが、以前は街の酒屋さんで買っていました。そのうちにスーパーで購入するようになりましたが、いつからかネットで購入して宅配で届けてもらうのが普通になっています。
このように、市場環境の変化という重力には逆らいようがありません。駅前の商店街や酒屋さんと同じ運命をたどるのかどうかは、経営者の判断にかかっていることを忘れないでください。
2割以上の患者が流出した薬局の末路は?
一般的な調剤薬局の利益は3~5%程度でしょう。したがって、2割患者が流出したら経営は成り立ちません。まあ、ひとり薬剤師が調剤薬局を経営しているのなら自分の給与を減らすだけで済みますが。片や、勤務薬剤師を複数人雇用している薬局なら、患者2割の流出は深刻です。
患者数の減少とは動脈硬化のようなものです。例えば、近隣にドラッグストアがある薬局なら今現在も前年比で3~5%程度は患者数が減少していることでしょう。しかしこの程度の減少は肌では実感できません。1日80人程度の患者数なら3%で2人、5%で4人ですからね。月末に集計を出してはじめて「また患者数が減っている!」と気づく程度でしょう。
一方で2割なら話は別です。毎日のように十数人患者数が減れば、誰でもヒマになったと実感します。また、現実問題として経営は成り立たなくなります。
先日、ある看護師の女性がお勤め先を退職され、転職活動中というお話を伺いました。その理由を聞いたところ、同じ病棟の看護師がいちどに5人同じ月に退職することが原因だとのことでした。薬剤師も同じです。
明らかに業績が下がれば、薬剤師も転職を考えます。これは自然なことです。したがって、複数店舗のオーナーは注意が必要です。業績が落ちたことでひとりでも薬剤師がやめれば、それは連鎖する可能性が大です。薬剤師が一斉に辞めてしまい、薬局運営が成り立たないケースも十分に想定できます。
そうならないためにも、キャッシュレス対策は怠らないでください。
実は、キャッシュレス化の推進はチャンスでもあります!
くどいですが、キャッシュレスを希望する人が国民の4割に達することは想像に難くありません。これは調剤においても同じです。そこで重要になるのは次の事実です。
ほとんどの人は、今利用している調剤薬局にロイヤリティ(忠実性または忠誠度)などありません。だからこそ、門前薬局に足を運ぶ人がほとんどなのです。また、門前薬局で待たされることがイヤな人などが地元の薬局やドラッグストアに足を運びます。つまり、ポイントは待ち時間です。
必ず、一定割合はドラッグストアに流出する!
キャッシュレス決済を希望する人たちの一定割合は、必ずドラッグストアを選択します。なぜなら、ドラッグストアがすでにキャッシュレスに対応していると誰もが認知しているからです。しかし、この流れは続く一方で、すぐに限界が訪れます。それが、待ち時間の問題です。
例えば、私の地元にはウエルシアがあります。そして、半径500メートル以内に3件の診療所と門前薬局4店があります。一日の患者数の合計はおおよそ300人くらいでしょうか。その2割である60人がウエルシアに足を運んだとしたら、この店舗はひとり薬剤師なのでおそらくパンクします。いくら買い物ついでで来店されても、待ち時間で患者はひどいストレスを覚えるでしょう。
これは、どのドラッグストアでも同じだと考えていいでしょう。したがって、キャッシュレス決済を望む患者の過半数は、ドラッグストア以外の選択肢を探すことになるでしょう。一方で、地方では調剤部門がドラッグストアにない店舗がまだまだ多いようです。そういった地方なら、都市部以上に選択肢を探す患者だらけになるでしょう。
あなたの経営する薬局が、そんな患者の受け皿になればいい!
冒頭でご紹介したように、私のクライアントはすでに2018年春からこのキャッシュレス化を逆手にとった集客をはじめています。そして、既存のキャッシュレスを望んでいた患者を少しずつですが集客しており、おおよそ次のような状況になっています。
- すべての薬局で前年同月より50枚以上処方せんが増えている
- ある一店舗は前年同月に比べて100枚以上増えている
重要なのは、今は来年の10月に向けて種を蒔いている時期という事実です。
キャッシュレスに敏感な人はPayPayやLINE Payの20%還元キャンペーンに反応されましたが、ほとんどの人はそういったキャンペーンすらご存知ありません。しかし、来年の夏にはそういった景色は一変していることになるでしょう。
そしてこのとき、クライアントの方々は実りの秋を迎えることになります。そして、この実りの秋はしばらく続くことになるでしょう。
この施策を提案した理由とは?
実は、この施策をクライアントに提案したのは今後予想される調剤報酬改定のためでもあります。具体的には、集中率の案件が強化されることに対応するためです。
集中率の案件の想定
- 集中率の案件は現在2,000枚/月の薬局が対象 → 取り扱い枚数に関わらず集中率が適用
- 現在は集中率85%以上が対象 → 70%以上に適用
この想定に異論がある人は多いと思いますが、私はクライアントに本質的な経営を求めております。最悪の事態を想定し、適切な手立てを講ずる。これが経営の基本ですから、この想定がはずれてもまったく問題がありません。結果的に経営状況は大きく改善しますから。ですが、逆のことを想定してみましょう。
今後、社会保障費の増大で、調剤報酬改定がどんどん厳しものになることは疑いがありません。それは2018年4月の改定でも明らかで、私はこの改定における次の点は中小の調剤薬局への予告的なものであると考えています。
予告的な意味をもつ改定
- 「基準調剤加算」(32点)が廃止され、「地域支援体制加算」(35点)が新設された
- 地域支援体制加算は、事実上「基準調剤1」算定薬局以外は取得できない
私は、今後はこういった「並大抵の努力ではとれない加算」がどんどん増えていくと想定しています。また、機械化を前提に日数加算や一方化加算は減額されていくことも間違いありません。さらに、後発品加算は目標値を超えたとき、罰則加算としてマイナス算定となるでしょう。
こういった想定を元に、私は「70%超えておけば今後も基準調剤1は死守できる」と今回の取り組みを提案したことを、ここでご紹介しておきます。
まとめ
この話が見えた(理解できた)上で適切な行動をした薬局経営者は、消費税増税に伴うキャッシュレス推進はとても大きなチャンスになる。一方で、わからない薬局経営者は、ほぼ間違いなく1年後には大幅な減益。また、3年後には廃業し、借金返済のために勤務薬剤師となる。そんな悲惨な未来が待ち受けていることになる。
この私の想定も、経営者の理解力で認識に大きな違いがあるでしょう。
重要なのは、ギリギリまで動かない人が大多数であるという事実です。
例えば、消費税の増税では、いつも2~3か月前になって「消費税増税反対!」というデモが起きます。また、直前の駆け込み需要もそうでしょう。また、調剤薬局の事例なら「ヒヤリハット報告」も同じです。さっさと登録するだけの話なのに、今頃申し込んだ薬局は登録4か月待ちといったありさまです。
勘の良い経営者なら、この話はとても大きなヒントだとお気づきになられたと思います。
そう、2019年の消費税増税時のポイント還元もまた、ギリギリまで動かない人が大多数に上ることになります。ならば…、この人たちを適切に教育してあげれば、患者数は増えることになります。しかも、適切な教育ですから患者は感謝してくれます。
このように、今後の市場環境の変化は本質的な経営が求められます。つまり、せっかくのチャンスが目の前にあるのに、経営ができない薬局はそのチャンスをつかみ取ることができません。キャッシュレスに対応しただけでは、一定割合の患者が流出します。その理由も旅先で薬局が目に入ることで明らかでしょう。
患者は、見えていても見ていません。見え方を変えて、見えるようにしてあげなければわかりません。その工夫と努力ができてはじめて、今回のキャッシュレス化に便乗できます。したがって、今後起きるであろう市場環境の変化は、経営者の腕の見せ所となります。ともに頑張りましょう。
【重要】
調剤薬局の収益=患者数×調剤報酬+薬価差益です。この内、調剤報酬と薬価差益は今後も一方的なルール変更が繰り返されますから、コントロールができません。一方で、患者数は経営努力次第で増えることもあれば減ることもあります。2019年、そんな経営者の力量が試される時代がやってきました。
この大きな経営環境の変化の波に乗り、大きく新規の患者数を増やそう。そう思われる方は、「キャッシュレス戦略セミナー2019」にご参加ください。
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