【超重要】「今後、生き残る調剤薬局運営」という常識をいちど疑ってみませんか?
大手調剤薬局チェーンによるM&Aにより、業界再編が加速していることは周知の事実です。その裏にあるのが経営状況で、調剤報酬の大幅な見直しにより中小調剤薬局は収益の確保が大きな課題となっています。そして重要なのは、今後ますます設備投資が必要となり、それができない薬局は収益の悪化が避けられないことです。
例えば。「患者のための薬局ビジョン」の中で、薬局・薬剤師は「服薬情報の一元的・継続的把握」「24時間対応・在宅対応」「医療機関等との連携」の3つの機能を持つべきと定められています。それに合せ、「健康・医療・介護の分野を有機的に連結したICTインフラ」を2018年度から段階運用、2020年度には本格運用を目指しています。
また、こういった流れににより薬局が調剤報酬を確保するには、今後ますます薬剤師の業務の幅は広がることになります。したがって、かかりつけ薬局業務による人件費の増加は避けることができません。
さらに、それに合わせて導入が不可欠になるのが自動分包機や薬の監査機、処方せんの自動読み取り(レセコンと連動)機など、業務を効率化するさまざまな機器です。しかし、今後これら業務を効率化する機器が、薬局自らの首を絞めることになります。これらの普及は、確実に日数加算や一方化加算の減算という流れとなることでしょう。つまり、今までと同じ業務で算定できる報酬については、1枚当たりの処方箋で確実に減額されます。
今後、制度改革がもたらすこと!
- ICT化と業務効率化に対する設備投資が大幅に増える
- かかりつけ薬局業務で薬剤師の業務量が増え、人件費が増加する
- 業務効率化を受けた制度改革で、報酬が減算される
薬局経営における常識とは?
以上のような背景から、今後の薬局運営の方向性を考えると一般には次のような常識を考えることでしょう。
適切な薬局運営の常識!
- 患者が入りやすく、気軽に相談できる店舗になっているか?
- 医療機関との連携はとれているか?(疑義照会や処方提案、処方医へのフィードバックや残薬管理・服薬管理など)
- 服薬指導やジェネリック医薬品の案内など、患者へ適切な情報を提供しているか?
- 発注のムダの排除。定期的な棚卸による在庫管理
- 経営状況の把握と分析
- かかりつけ薬剤師による指導や後発品加算の算定
こういった経営努力が薬局の「体力」=経営力につながりる。また、これからの薬局に必要な考えとは「患者本位の医薬分業」で、処方薬に関する知識やOTC医薬品(一般用医薬品)への知識を深めるなど、「患者さんを知る・守る」ために研鑽を積むことが必要不可欠。
こんな常識に囚われることになりますが、果たしてそれは本当でしょうか?
調剤報酬から得る薬局の利益とは?
「常識とは18歳までに身に着けた偏見のコレクションのことをいう」by アインシュタイン
先のような薬局運営を心掛けている調剤薬局は少なくないでしょう。ですが、それで患者は増えたと実感されたことがあるでしょうか?
「この薬局はとてもいい!」と、口コミが起きて門前以外の病院から次々と患者が処方箋をもって来店してくれる!などという話など、少なくとも私はいちども聞いたことがありません。門前以外の病院から患者が来店してくれるケースのほとんどは…
- あそこの薬局に行くとすごく待たされるので…
- あの薬局の薬剤師さんの態度がひどいので…
- 帰り道で便利だから…
まあ、おおよそこんなところだと思います。これがドラッグストアなら、「クレジットカードで支払うとポイントがつくので…」とか「買い物をしている間に薬ができるので…」といった理由だったりします。
薬局の収益構造を確認しましょう!
まず、確認してほしいことがあります。それは、薬局の収益はどこからもたらされるのか?という、ごく当たり前のことです。
調剤報酬改定が2年ごとに繰り返される都度、調剤薬局は調剤報酬に部分最適化して薬局運営をしてきました。しかし、調剤報酬から得られる収益も来店する患者があっこそのもの。つまり、患者数×調剤報酬=薬局の収益です。
自動分包機など高額の機器を導入し業務を効率化しても、来店する患者が少なければ採算は合いません。これは、当たり前の話でしょう。
調剤薬局のビジネスモデルが経営者の思考を止めている!
調剤薬局のビジネスモデルとは、一般にコバンザメ商法と呼ばれます。これは大型の生物に吸着して移動し、身を守りながらおこぼれを狙うコバンザメにちなみ、集客力がある店舗や事業所、観光施設などの近くで商売を行う商法です。ですが、薬局のビジネスモデルは同じコバンザメ商法の中でも稀有なもの。なぜならば…
- 調剤薬局:病院の門前に薬局を出店すれば収益までも確保できる。
- 他業種:コバンザメになった上で、集客と販売の努力が必要
もちろん、薬局の収益は門前病院の患者数に相関します。門前病院が繁盛していれば薬局の収益は一般に上がりますし、患者数が少なければ下がります。また、患者数が少なすぎれば薬局は出店をしないでしょう。ですが、他業種と比べ、あまりにも稀有なビジネスモデルであることに疑いはありません。
そして、そうであるが故、経営者の経営力が問われることはなかったのです。また、集客という発想すら、ほとんどの経営者にはなかったでしょう。仮にあったとしても、それはホープマーケティング。近隣や地域の広域病院からの処方箋が来るのを待っていたにすぎません。また、マレに集客に努力を重ねた経営者もいらっしゃるかもしれませんが、それは本当に効果的なものだったでしょうか?
ルール変更には逆らえない!ならば、できることとは?
薬局の収益=患者数×調剤報酬です。ここで重要なのは次の点です。
薬局の収益構造
- 調剤報酬:国が決めるルールで逆らいようがない。できるのは部分最適のみ
- 患者数:経営努力次第で増やすこともできる。努力しなければ減ることもある
余談ですが、このところクライアントから「在宅にビジネスモデルを転換しようと考えているが…」といった質問をいただく機会が増えています。
これは、冒頭のような「患者のための薬局ビジョン」がありますから、在宅を手掛けることは重要です。ですが、これもまた国が決めるルールにすぎません。ここが重要です。
どんな政策もそうですが、普及するまでは手厚く予算を投じます。しかし、その政策が浸透した後は、その予算は必ず減算されます。これは、調剤薬局ビジネス創成期から、ずっと繰り返されてきたことからも明らかでしょう。
つまり、薬局における在宅への参入が広がり需要が十分に満たされれば、その1件あたりの報酬は減額されます。したがって、在宅参入は必要ですが、それはビジネスモデルの転換などではあり得ません。今後も、一方的なルール変更に振り回され続けるだけの話です。
一方で、患者数は話が別です。
これは、国のルールが及びません。集中率の問題はありますが、門前以外の患者を増やせばまったく問題がありません。また、患者数が増えれば経営は安定します。薬剤師が不足していたとしても、機械化への設備投資ができます。効率化が進めば、薬剤師の働き方も変えることができます。
クライアントの事例
患者の集客にはそれ相応の予算が必要です。
では、どれくらいの予算をかければどれくらいの患者数が増えるのか?
おそらく驚かれると思いますが、今現在、健康関連のお客様をひとり獲得するのにおおよそ25,000円以上が必要とされています。一般のビジネスモデルでは、これだけのお金をかけてはじめて採算がとれます。だからこそ、札束に火をともす覚悟がなければビジネスの成功はありません。
ですが、創意工夫があればそこまで予算をかけずとも集客は可能です。
事実、私のクライアントは1店舗あたり6,000円/月程度の予算で、おおよそ1ヶ月5名くらいの患者数が増え続けてています。
「たった5名…」
そう思われた方は、とても危険です。なぜなら、獲得した患者は、メリットを感じたからこそ利用する薬局を変えています。そして、5名は年間で60名です。そこから患者数が増えなくても、単純計算で720名/年分が増益となります。もちろん、その後も患者数は増えますから、たかが5名と侮ってはいけません。
逆に、もし同じ門前病院の患者が他の薬局に奪われたなら、その薬局はそこから1年で720名分の減収です。仮に、毎月5名ずつ2年間にわたって患者が奪われたら、5×24=120名。そこから1年で12×120=1440名。薬局の規模によりますが、1ヶ月分の収益が吹き飛ぶことになります。
患者の集客ですから、やることと言ったら地味な作業の繰り返しです。ですが、その積み重ねが薬局経営の安定につがなることは明白です。ぜひ、薬局の収益=患者数×調剤報酬であること。そして、薬局自身でコントロールが可能なのが患者数であることを忘れないでください。
患者数を増やす経営努力が必要です!
それでは、患者を増やすにはどんなことをすればいいのか?ここでは、そのヒントだけご紹介します。
まず、患者が薬局に対して不満に思っていることベスト3は以下の通りです。思い当たる薬局も少なからずあるのではないでしょうか?
- 待ち時間が長い
- 在庫切れ
- 薬剤師の言葉遣いや態度
では、感謝の理由ベスト3は?
- 薬の説明をきちんとしてくれた
- 薬剤師の言葉遣いや態度が良かった
- 質問や相談にきちんと答えてくれた
おそらく、ほとんどの薬剤師はこういった患者の不平不満と感謝の話から、先のような「適切な薬局運営の常識」を考えてしまうのでしょう。ですが、ここでとても重要なポイントを指摘します。
- 「不平不満」は本質的なもの
- 感謝の理由は本質ではありません
わかりますか?不平不満は「本音」です。
一方で、感謝の理由は、その質問に沿った答えを探して口にしただけのこと。決して本音ではありません。
この理解がないからこそ、「店舗運営も含め、薬剤師としてしっかりと…」みたいな発想しかでてきません。逆に、この理解ができれば患者の集客には何が必要なのか?容易に想像できます。
例えば、以下のようなマトリクスを使って考えてみましょう。
さて、どうすれば患者のこんな不満(本音)に答えることができますか?
ニーズ(待ち時間を減らしたい)&ウォンツ(さっさと受け取りたい)を満たせるようなお返事を考え、それを提供すればいいだけのことです。そして、それが適切な提案であるのなら、患者は門前の薬局から御社に足を運ぶようになります。事実、私のクライアントはそういった提案を提供し、2018年1月からの1年で1店舗当たり100名以上の新規患者(門前以外)が来店するようになっています。
端的に言えば、経営で集客に必要なこととは、とてもシンプルでカンタンなことの寄せ集めです。話を聞けば誰でが、「あ~、そんなことね…」と思うレベルの話です。
でも、易しくはありません。
ここが経営の難しいところですが、要は、経営とはスポーツのようなものだとお考えください。例えば柔道の背負い投げ、背負い投げのやり方を本で読んだり聞いたりするだけでできますか?できませんよね。
同じ動作を何万回も繰り返し、体で覚えなければ本当の背負い投げなどできるものではありません。また、そのためには筋力も必要ですし、相手との駆け引きも必要です。経営における集客も同じで、単純な作業ですが患者との駆け引きを想定した取り組みが必要になります。
これでなんとなくでもお解りいただけたと思いますが、
患者を集客するのに必要なこととは?
- 患者が薬局に足を運ぶにはどんなことが必要か想定する
- その想定に基づき、どんなアイテム(例えばチラシやLINEなど)を使うか決める
- それを試す
- うまくいったらそれを続ける
- うまくいかなかったらやり方を変える
- なんとなくうまくいったくらなら、少し修正して比較してみる
- それをシステムとして設計図に落とし込む
- あらたな想定がでてきたら、また1から同じことをする
そういった努力が、本当に求められるのが2019年10月です。もちろん、それ以前に準備が必要ですから、少なくとも7月には適切な手立てを講じるようにしておきましょう。
まとめ
今後も、一方的なルール変更により、調剤薬局の経営は大きく影響を受け続けることになります。したがって、調剤ビジネスで経営安定を図るには、患者数の確保が最優先課題となります。
しかし、ほとんどの薬局経営者は調剤報酬に部分最適化することに終始し、この最優先課題に十分な対処を怠ってきました。これは、大多数の薬局において今後も変わることはないでしょう。なぜなら、薬局経営者はその稀有なビジネスモデルが故に、経営能力が削がれてしまったからです。
経営力とは、一朝一夕に磨かれるものではありません。例えば、柔道の背負い投げも、そのやり方を本で読めばできるというものではありません。何千何万と練習を繰り返し、創意工夫を重ねてはじめて一流の背負い投げができるようになります。
経営も同じです。
集客の方法を考え、それを実行する。うまくいかなかったらやり方を変える。うまくいくまで、ずっとずっとそんなトライ&エラーを重ねてはじめて集客ができます。
正直、地味な努力です。
しかし、今後は他業種と同じように、経営ができな調剤薬局は退場を迫られることになります。
ここ1年がリミットです。
この意味が分かる方は今すぐ行動しましょう。
【重要】
調剤薬局の収益=患者数×調剤報酬+薬価差益です。この内、調剤報酬と薬価差益は今後も一方的なルール変更が繰り返されますから、コントロールができません。一方で、患者数は経営努力次第で増えることもあれば減ることもあります。2019年、そんな経営者の力量が試される時代がやってきました。
この大きな経営環境の変化の波に乗り、大きく新規の患者数を増やそう。そう思われる方は、「キャッシュレス戦略セミナー2019」にご参加ください。
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