薬局経営をデザインする!そのビジネスモデルで本当に満足ですか?

2018年12月28日

私は薬局の経営者でもあります。調剤薬局チェーンのオーナーもいらっしゃるので、私より報酬の多い方は少なくないと思います。ですが、当社は週休三日制です。年間営業日数は201日で年間休日は164日あります。また、スタッフはこれに加えて有給休暇が自由にとれます。したがって、ほぼ2勤1休です。

 

また、基本営業日は決まってはいるものの、私の都合で営業日が決まります。ですから、私は自由に休みがとれますし、年間で4~5回、7~10日間の旅行にでかけています。

こんな私より、自由な時間を確保できる薬局経営者が果たしてどれくらいいらっしゃるでしょうか?

こんな私の話を聞いたうえで、まずはご自分で問うてください。

「このまま、国の政策誘導に乗り、一喜一憂する薬局経営でいいのか?」と。

厚生科学審議会 (医薬品医療機器制度部会)の第4回会合で花井委員が指摘したように、調剤薬局は、そもそも薬漬け医療のカウンターカルチャーとして政策誘導ではじまりました。そのおかげで調剤薬局は儲かり、我が世の春を謳歌してきました。しかし、2014年ごろから政策が変わり、明らかに雲行きが怪しくなったのはご承知の通りです。

そこで重要になるのが、ビジネスモデルの転換です。

施設や在宅への取り組みを強化したい!

  • 「施設の処方せんをとってきて、ビジネスモデルの転換をしたいと考えています。」
  • 「在宅中心のビジネスモデルに転換したいと思うのですが…」

私はよく、クライアントからこのような相談をいただきます。そんなとき、その都度次のような話をご紹介しています。

「しっかり聞いてね!どこからの情報で施設や在宅をビジネスモデルの転換だと思ったか知らないけど、そんな情報を口にしている人は次のどちらかだから…」

  • ビジネスがまったく理解できていない人
  • ビジネスがわかっていて、ビジネスがわからないあなたたちを騙したい人

沈没する船!

「あんたたちは社会保障費増大という、沈没する船に乗ってるの。その中で、もうすぐに海の底に沈んでいくのがわかっているものと、そうでないものがあるわけ。」

「わかると思うけど、船が沈没したとき最後まで残っていたら必ず死ぬわけ。船が沈むときの渦に巻き込まれて、必ず死ぬ。

そうならないように、あなたたちは船から逃げる準備をはじめたわけ。もちろん、調剤は続けるわけだけど、少なくとも船から逃げて、調剤と別の取り組みをはじめたのはそういったこと。」

「重要なのは、在宅は今後しばらくは沈まないけど、それはビジネスモデルの転換になどまったくならないこと。見ればわかるでしょ。トータルで考えれば…。

在宅のフィーがついても、他が沈むんだからトータルで増えるのは今だけに決まっているでしょ。次回改定の時くらいはトータルで増えるのかもしれないけど、それ以降は…」

「調剤薬局は、どんどん沈んでいく船に乗っている。トータルでとれるフィーは減っていくんだから、在宅への取り組みは大事だけど、それは部分最適化にすぎないの!

 

決して、ビジネスモデルの転換などではない。

そんなこと口にしているあなたたちは、まだまだビジネスがわかっていないね。経営の勉強をもっとしなくちゃダメだよ!」

人のことならわかる!
調剤薬局の経営者に限らず、人は自分の業界のことだと突然盲目になります。でも、人のことならわかります。例えば…

  • DVDが発売されたときのビデオテープ
  • CDが発売されたときのカセットテープやレコード
  • デジカメが発売されたときのフィルムメーカー
  • コンビニでコーヒーが売れるようになった後の缶コーヒー全体の売り上げ

どれも、おおよそ想像がつきましたし、その後の結果もご存じの通りです。ですが、中には例外もあります。

例えば、コンビニの入れたてコーヒーの場合、私も含めてほとんどの人は次のような想定をしたと思います。

「コンビニの缶コーヒーは売れなくなるだろうな…」

しかし、現実はさほど売れ行きは減りませんでした。ところが、意外なところに影響がでており、自販機の缶コーヒー売り上げが激減していたそうです。

このように、想定していたことが少しずれるケースもあります。しかし、社会保障費を前提にすれば、今後の調剤薬局運営に明るい未来を想定できる人などいらっしゃるのでしょうか?

ですから、私は冒頭のような相談をいただくと、最後に次のような話をします。

泥船に乗っている!

「あなたたちは泥船に乗っているの!それを自覚して、次の手を打ちましょう。

おおよそ想像できるでしょ!医師や看護師、介護士、薬剤師。予算が足りなくなったらどこ削る?」

答えを聞くまでもありませんよね。

ですから、ここはとても重要なので強調しておきます。

重要!

  • 在宅への取り組みは重要です
  • ですが、それはビジネスモデルの転換にはなり得ません
  • あくまでも調剤報酬内における部分最適化です

冷静に考えればだれでもわかりますが、そもそも保険で食っていて、他との差別化できるビジネスモデルなんてあり得ませんから。これは、医師や歯科医師でも明らかです。

じゃあ、医師や歯科医師は?

歯科医師で儲かっているのは、審美歯科やインプラントなど自由診療です。また、美容整形でわかるように、医師でもハッキリと差別化できているのはヤハリ自由診療です。

ですが、自由診療をやれば必ず儲かるわけではありません。儲かっているところは「立地という重力」を理解したうえで、広告宣伝を含めてビジネスを展開できている病院に限られます。

薬局も同じです。それも、薬局が参考にすべきは歯科です。その理由もカンタンで、歯科は保険診療と自由診療を同時に行うことができるからです。

いちどくらい歯医者さんで聞かれたことありますよね。「保険内で治療しますか?それとも…」というやつです。

再度、見たくない現実を確認しましょう!
今の調剤薬局のビジネスモデルは処方せん枚数がすべてです。そんな調剤薬局に、私は真のビジネスモデルの転換をご紹介しています。そこで、あらためて確認しておきましょう。

厚生科学審議会 (医薬品医療機器制度部会)の第4回会合における委員の意見

山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML・理事長)
「大半の薬局は不十分で、その要因は調剤報酬だけで経営が十分にやっていけるところにある。多くの薬剤師がこの認識を変えなければ、(医薬分業は)コスト・サービスに見合ったものではない」
花井十伍委員(ネットワーク医療と人権・理事)
「患者のための薬局ビジョンで対人業務にシフトすることが掲げられているなか、調剤のみならずOTCにも取り組むのは当然。むしろOTCが調剤より軽んじられていることに違和感がある」

民間の委員から、このような意見がでるほどの状況です。ならば、先のような在宅への取り組みなど、既存の報酬が減ることで吹き飛んでしまうことは明らかでしょう。したがって…

今後、安定した経営を持続したければ、泥船から降りて他の取り組みをはじめるしかない。

私はそう考えますが、あなたは違いますか?

薬局経営をデザインする!

あなたがお金だけではなく、時間的にも恵まれたいのなら仕組化を前提に仕事をデザインする必要があります。それなくしてたどり着くのは、日々作業に追われるだけ毎日となるのは明白です。

そこで、ビジネスモデル転換のヒントとして、キャッシュフローのクワドラントをご紹介します。これは、お金を稼ぐ方法を4つのカテゴリーに分けた考え方です。

  • E:employee(従業員)企業から仕事をもらい、その労働対価として給与を得る
  • S:self employed(自営業者)自営業者。弁護士や税理士などの士業
  • B:business owner(ビジネスオーナー)実質の経営は他人に託し、権利から収入を得る仕事。チェーン展開する飲食店や美容院のオーナー。特許や作品から印税を得る作家や漫画家、アーティスト
  • I:incestor(投資家):不動産収入や株、債券など金融商品から利益を得る仕事

EとS:労働収入型 – 働き続けないと収入は止まる

医者や弁護士はもちろん、一流のプロ野球やサッカーの選手なども同じ

お分かりのように、今までと同じ図の左側、「労働対価」というビジネスモデルではダメなのです。先のような「在宅の強化」など、典型的な「労働対価」です。したがって、時間の自由などあり得ません。また、緊急対応などがあり得るなら、それはなお更あなたの自由な時間を奪うことにつながります。

収益を確保し、時間の自由を確保するためには右側の「権利所得側の収入」を作る必要があります。そのためには、仕組化の視点をあなたの仕事に取り入れる必要があります。

私は10年以上前からこういった経営デザインを考え、実践してきました。が、もちろんカンタンなことではなく、2012年、4年かかってそのデザインはようやく形になりはじめ、年間休日を165日にできました。

また、2016年、さらに試行錯誤を加えた結果、ようやくそのデザインは完成しました。また、このときから年間休日は164日+有給休暇です。

そしてもちろん、今現在、新たなデザインを考えて経営を実践中です。

まとめ

あなたの目的地はどこにありますか?

今後も、既存の調剤業務や在宅への取り組みなど「労働収入型」のビジネスで、あなたが希望する目的地にたどり着くことができますか?

在宅への参入は、むしろあなたの希望する目的地にたどり着く障害になりませんか?

もし、目的地にたどり着くことができないのなら、次のようなビジネスモデルを取り入れる必要があります。

  • 取り組みを重ね、それが資産となる
  • その資産が働き収益を生む
  • さらに取り組みを重ね、その資産がさらなる収益を生む

これが調剤薬局における真のビジネスモデルの転換です。そんな、好循環が続くビジネスモデルを考えてみましょう。それしか、蟹工船から抜け出す方法はありません。

薬局経営をデザインし、あなた色に染めてみましょう。

きっと、うまくいくよ!