人口減少による市場の変化が調剤薬局に与える影響とは?

2019年1月5日

厚生労働省の発表によると、すべての都道府県で2020年から人口が減ります。この記事は2018年の12月ですから、あと1年ですべての都道府県で人口が減りはじめます。この人口減が調剤薬局経営に与える影響を、正確に想定している経営者はどれくらいいるのでしょうか?

20年後、2040年の秋田県や青森県などは…

わずか20年後、40年時点で秋田県は10年比35.6%も人口が減ります。次いで青森県(32.1%減)、高知県(29.8%減)と続き、福島県(26.8%減)や岩手県(29.5%減)も全国平均の16.2%より大幅に落ち込みます。また、7割の市区町村で人口減少率が20%以上となります。

その意味で、現在50歳以上の薬剤師は勝ち組となります。さほど人口減の影響が給与に反映されることがないからです。一方で、若い薬剤師は、とくに人口減が20%以上となる市区町村の中小調剤薬局に勤務する薬剤師の将来はとても暗いものになります。

20年後、単純計算で患者さんが2割以上減ります。また、10年後も、おおよそ5%以上は患者さんが減っているでしょう。このとき、今の人員構成で経営の成り立つ調剤薬局などほとんどないでしょう。

重要なのはインフラコストです。

人口が減ればインフラやコミュニティを維持するコストが上がります。そのため、人口の流出に拍車がかかります。したがって、現時点でこういった地域で調剤薬局を営んでいるなら、今すぐにでも移転を検討する必要があります。

人口構成比率の変化が調剤薬局に与える影響とは?

市区町村別でみると、2010年比で人口が増える自治体は全体の5%弱にあたる80あります。逆に、人口の落ち込みは小規模な市町村ほど激しくなります。また、65歳以上の人口割合は10年の23%から40年に36.1%と高くなります。

この傾向は大都市圏と沖縄でとくに顕著で、埼玉県と神奈川県は、75歳以上人口が10年の2倍以上となります。一方で、地方では高齢者数はそれほど増えません。が、高齢化率は40%程度と高止まりする自治体が増えることになります。

施設の奪い合いがさらに激化する!

  • 人口は2割以上減る – 患者数が2割以上減る
  • 高齢化率は40%に達する

この事実から導かれる患者数確保への答えは、やはり高齢者がターゲットになります。また、効率的な患者数確保には施設を押さえているのが一番です。つまり、今後はとくに施設を押さえているかどうかが大きなポイントになります。

単純な話、施設を確保できなかった調剤薬局は、そのほとんどが人口減少率を大きく超えた患者数の減少になります。今後、認知症患者が激増することが予想されていますから、調剤のみに収益を依存していくのなら施設の確保は欠かせないでしょう。

東京や神奈川、埼玉など高齢者人口が大幅に増加する地域では、施設を確保できれば人口減時代を乗り切れるかもしれません。一方で、地方では話は別でしょう。

施設を確保できても患者数は減少します。今後、薬価改定は毎年行われますし、調剤報酬も減少します。施設の確保ができないのなら、傷口を広げる前に薬局を閉めることも視野に入れておきましょう。

2025年問題と在宅調剤

団塊の世代が75歳を超える2025年には、高齢者人口が約 3,600 万人に達すると推計されています。また、高齢者の世帯の約7割一人暮らし・高齢夫婦のみの世帯、なかでも一人暮らしの高齢者世帯が約37%に達すると見込まれています。

その意味で、在宅調剤への積極的な参入は生き残るためにとても重要です。

小児科の門前薬局

今後、0~14歳人口が10%未満の自治体が全体の6割弱となります。このとき、もっとも影響を受ける診療科は産婦人科と小児科でしょう。これは、小児科門前の調剤薬局も同じです。したがって、たとえ小児科門前であったとしても、薬局経営の安定化に在宅への参入は必要不可欠になるでしょう。

在宅参入にもノウハウがいる!

先のように、2025年には高齢者人口が約3,600万人になります。また、高齢者の一人暮らし世帯は680万世帯、高齢者夫婦の世帯は609万人と推計されています。つまり、高齢者だけの世帯の人口は合計で約1,898万人となります。

さらに、認知症高齢者数は2002年に約 150 万人で、その当時は2025年に320万人になると推計されていました。しかし、2012年にはすでに認知症高齢者数が462万人(高齢者の約7人に1人)に達し、最近の推計で2025年には約5人に1人と、おおよそ700万人になると推計されています。

入りたくても介護施設に入れない!

人口減で若い働き手が減る地域tでは、介護サービスの提供がすでに課題になっています。また、介護業界が慢性的な人手不足であることはご承知のとおりです。

その一方で、高齢者の数は増えています。また、認知症患者数もこれから激増することになります。しかし、介護施設に入りたくても入れません。その理由の多くは、やはり人手不足です。箱(建物)があっても人手が足りない、つまりサービスの提供ができないから施設に受け入れることができません。

そんな高齢者が増えるわけですから、在宅は有望です。しかし、そこでも問題があるのは事実です。

サービス提供業者との付き合いは必須!

在宅で介護を受ける認知症の高齢者も、デイサービスや介護老人保健施設のショートステイなどのサービスは利用されます。また、こういった一連の介護サービスを選ぶときケアマネージャーなどが関わりますし、在宅でサービスを提供するのが介護ヘルパーです。当然ですが…

  • こういったサービス提供業者の方々と面識があるのか?それともないのか?
  • サービス提供業者と連携がとれているのか?
  • また、介護ヘルパー個人レベルとコミュニケーションがとれているのか?

医師との連携はもちろんですが、こういった介護サービス提供業者と良質なコミュニケーションがとれているかどうかが大きなポイントとなります。なぜなら、これらのサービスを希望する利用者の情報が真っ先に飛び込んでくるからです。

まとめ

人口減少は患者数の減少と、ほぼイコールの関係と考えていいでしょう。したがって、今後は門前以外からの処方箋を獲得できるかどうかが調剤薬局の経営を大きく左右することになります。

しかし、ほとんどの調剤薬局は営業の経験もありません。また、セールスの本質的な意味もご存知ありません。まして、薬剤師はそういった仕事を避ける傾向があります。その意味で、人口減少による患者数の減少において、調剤薬局の経営者の力量が問われることになるでしょう。

 


【重要】

調剤薬局の収益=患者数×調剤報酬+薬価差益です。この内、調剤報酬と薬価差益は今後も一方的なルール変更が繰り返されますから、コントロールができません。一方で、患者数は経営努力次第で増えることもあれば減ることもあります。2019年、そんな経営者の力量が試される時代がやってきました

この大きな経営環境の変化の波に乗り、大きく新規の患者数を増やそう。そう思われる方は、キャッシュレス戦略セミナー2019にご参加ください。