オリンピック後に訪れるであろう調剤薬局の景色とは?
国の政策は、企業の経営状況に大きな影響を与えます。そもそも、調剤バブルも「医薬分業を進展させる!」という国策があったからこそ。超高齢化社会を目の前に、その国が方針を変更したわけですから今後の調剤薬局の経営環境もまた、次のような話からも容易に想像できます。
太陽光バブルの崩壊から調剤薬局は何を学ぶのか?
東日本大震災で原発事故が起き、再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を利用する気運が高まりました。12年には再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が導入され、太陽光関連市場は急速に拡大しました。
当初、固定買い取り価格は高価格帯でしたが、現在では固定買い取り価格も年々減額され続けています。2018年どは1キロワット時あたり18円に引き下げられ、FIT導入当初の40円に比べ半額以下になっています。また、太陽光発電の普及が進むドイツやフランス、アメリカなどは5~10円程度とされ、経産省は今後数年かけて10円前後への引き下げをめざしています。
そんな太陽光関連事業者に倒産が相次いでいるのはご承知の通りです。
調剤薬局も同じです!
「太陽光パネルを並べただけで、そのままずっと儲かるわけないじゃん!」
ほとんどの人は、この太陽光関連事業者の末路についてそう思われたのではないでしょうか?私もその一人で、たったこれだけのことでパラダイスが続くことなどあり得ない。そう思っていました。そして、そんな未来が想像できた事例など山のようにあります。
- ビールや日本酒などの販売が自由化されたとき、酒屋がどんどん食っていけなくなった
- デジカメが普及したとき、フィルムはダメになる-事実、コダックは倒産
- スマホで写真がとれるようになったとき、デジカメは売れなくなるCDが普及したとき、レコードは売れなくなる
- MP3が普及したとき、CDも売れなくなる
挙げればキリがありませんが、このように誰もが同じような未来を想像できるような事例は山のようにあります。そう、人のことならわかるんです。
ですが、自分のことになるとわからなくなる。
なぜなら、現実を「観なく」なるからです。そこで、オリンピック後の世界を観ていきましょう。
オリンピックまでに進む「キャッシュレス化」という国策
訪日外国人をとり込む。これが、安倍政権が進める国策のひとつです。その国策は順調に達成されつつありますが、それとともに国が目指しているのがキャッシュレス化です。
韓国は1999年に年間カード利用額の20%を控除する制度を設け、3年間でクレジットカードの使用金額が7倍に増え89%になりました。また、中国60%ですが日本はわずか18%と、韓国の4分の1の水準です。
そんな日本の目標は、27年までに現金以外の支払い率を40%に高めること。その達成のため、成果を収めたとのこと。日本も韓国と同様、所得控除案を議論し19年度の予算と税制改正等に反映する計画です。
訪日外国人が多い所はキャッシュレス化に力を入れる!
2019年10月、消費税が10%に増税されるのに併せて、キャッシュレス決済利用者に5%のポイントが還元されます。果たして、このポイントが気にならない人などいったいどらくらいいるでしょうか?
そもそも、キャッシュレス決済を利用するだけでポイントが貯まります。クレジットカードなら1%ですし、カードから楽天Edyなどにチャージすればさらにポイントが貯まります。また、LINE Payなら期限付きですが現在でも5%。PayPayも20%還元キャンペーンを行いましたし、LINE Payもそれに追随しました。
また、増税前のワイドショーや新聞、雑誌などはこういったポイント関連の情報が溢れかえるようになります。増税時の5%に加えてキャッシュレス 決済のポイントがそこに上乗せされなどの情報が氾濫しますから、それでも動かない人の方がむしろ少数派になるのではないでしょうか?
東京や大阪、福岡など、訪日外国人が多い地域は店舗サイドもキャッシュレス化に力を入れています。そのため、先の国の政策が反映されると急速にキャッシュレス化が進むことになるでしょう。例えば、地方が30%程度である一方で、都市部は50%といった具合です。
キャッシュレス化が進めばなお更ポイントに敏感になる!
クレジットカードの利用をすれば、必然的にポイントが貯まります。したがって、人はなお更ポイントに敏感になっていきます。これは、薬局経営者のあなたも同じでしょう。そして、そんな状況でもっとも調剤薬局に大きな影響を与えるのがドラッグストアでしょう。
ドラッグストアの集客力
- 食料品の品揃えをさらに強化し、集客力を上げる
- 店舗独自のポイントが貯まる
- クレジットカードのポイントも貯まる
- 「ポイント何倍デー」など、店舗独自のキャンペーン
こういった類のことで、処方せんのシェアを急速に伸ばすことになるでしょう。したがって、都市部の調剤薬局はオリンピック後に次のような状況に追い込まれると私は想像しています。
患者数が2020年1月に2割減!
2019年の10月や11月は、「最近、少しヒマになったような…」くらいなのかもしれません。が、2020年の1月にもなれば、何が起きているのか?はっきりと体感できるまで客数は減少していることでしょう。そんな私の想定は次の通りです。
2020年1月の患者数
- キャッシュレス決済サービスの導入をしなかった薬局:2割減
- サービスの導入をした薬局:1割減
増税ポイント還元終了時2020年7月
- キャッシュレス決済サービスの導入をしなかった薬局:3割減
- サービスの導入をした薬局:15%減
さて、この想定ははっきり言って私の勘ですから、当てになるものではありません。勝手な予想ですから、そうなるかもしれませんし、ならないのかもしれません。もしかしたら、これ以上のことが起きている可能性すらあります。
キャッシュレス決済の手数料も問題になります!
キャッシュレスに対応しない薬局は、おそらく経営状況は大きく傾くことになります。そして、気づいた時点で慌てても、許可が下りるまでに時間がかかりますから取り返しはつきません。
一方で、キャッシュレスに対応しても客数は必ず減少します。そしてこのとき問題になるのが決済手数料。一般に、3.5%平均の手数料がかかりますから、利益は大きく減ることになります。
例えば、調剤薬局の経常利益は3~5%といったところでしょう。したがって、すべての人がキャッシュレスを選択したのなら、決済手数料によりほぼ利益は吹き飛びます。
また、患者数が2割減ったうえで、仮に半数の人がキャッシュレスを選択したのなら大幅な赤字となります。
その上、2020年の4月には調剤報酬改定になりますから、ほとんどの薬局はパニック状態に陥るのだと私は想定しています。
まとめ
さて、やならければいけないことは見えてきたでしょうか?
幸いなことに、ほとんどの薬局経営者はことの大きさに気づいてはいません。したがって、この大きなうねりを利用すれば、この想定とは逆に大きく患者数を増やすことが可能です。
要は、その流れを仕組化してあげること。それができさえすれば、増税時に大きく患者数が増えます。また、ポイント還元が続く9か月の間にそれは順調に続くことになります。
さらに、何の行動もしなかった薬局は経営状況はボロボロになります。勤務薬剤師を雇い続ける余裕はなくなり、赤字で立ち行かなく薬局も増えることになるでしょう。今回のキャッシュレス決済普及とは、それほど大きな市場の変化なのですから。
ですから、まずは思考しましょう。
何をどうすればいいのか?
患者数を増やすにはどんな施策が必要なのか?
それを問うてみましょう。そして、思いついたことを実行しましょう。
それを仕組化して淡々と続けていれば、患者は自動ベルトコンベアーに乗ってあなたの薬局に来店するようになります。
また、決済手数料についても同じです。しっかり考えて行動すれば、この決済手数料もしばらくの間は猶予が得られます。
2020年の4月、調剤報酬改定を笑って迎えることができるのかどうかは、経営者のあなたにかかっています。
きっと、うまくいくよ!
【重要】
調剤薬局の収益=患者数×調剤報酬+薬価差益です。この内、調剤報酬と薬価差益は今後も一方的なルール変更が繰り返されますから、コントロールができません。一方で、患者数は経営努力次第で増えることもあれば減ることもあります。2019年、そんな経営者の力量が試される時代がやってきました。
この大きな経営環境の変化の波に乗り、大きく新規の患者数を増やそう。そう思われる方は、「キャッシュレス戦略セミナー2019」にご参加ください。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません